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エッセイSP(スペシャル)

うに丼と積丹ブルー

冴木 あさみ

2015年8月 3日

 平日の朝の札幌駅はいつも通り通学通勤の人達が忙しそうに行きかっていた。北口の団体旅行の集合場所付近だけは様子が違い、中高年が集まって楽しそうにお喋りをしている。今日は金曜日。休みを取って初めて日帰りバス旅行に参加するのだ。ツアー名は「旬のうに丼&浜鍋と絶景の積丹半島」
 満員御礼四十七人を乗せたバスは行楽日和の澄み切った朝日の中を走り出す。皆が仕事をしている時間、遊びに出かけるのは気分がいい。まずは小樽の田中酒造に寄り朝っぱらから試飲ときたものだ。試飲というのに店員が猪口になみなみと酒を注いでくれる。すきっ腹にはちょっときついが実にいい。わけもなく楽しくなる。ほろ酔い気分のまま昼頃、本日のメインとなる小高い山の上の食堂に着いた。既に団体客用のテーブルがずらりとセットされている。小ぶりの器にのっている黄金のうに。今年の抱負の一つ「積丹でうに丼を食す」が叶った瞬間だ。口に入れると甘くとろけて喉に落ちていく。ゆっくりと後味を楽しんでから、また一口。「んん、美味しい。本当に美味しい」長テーブルに座る四十七人は、他に表現方法などありませんと断言しているかのごとく、ただ「美味しい」を繰り返していた。昨年二度来たという人もいる。日帰りバスツアー毎年人気第一位だとか。
 食堂のすぐそばに狭いトンネルがある。食事を済ませた一行は自由散策となるのだが、皆その暗いトンネルに吸い込まれていく。中は真っ暗。恐怖を感じるほどの暗闇をそろそろ進むとトンネルの出口が現れ、その先には北海道の海とは思えないほど青い海、島武意海岸が眼下に広がっていた。その後バスでさらに移動し神威岬へと向かった。風の強い岬だった。添乗員が車中「記念撮影では全員オールバックで写真に納まる場所です。くれぐれも帽子、カツラを飛ばさないように」と笑いを取っていたが、なるほど飛ばされたら回収にも難儀しそうだ。積丹ブルーの絶景ではあるが、ミステリードラマのクライマックスシーンには使えそうにない。岬の先の灯台まで行きたかったが、そこが時間制限のあるツアーの辛いところ。次の機会のお楽しみということに。
 札幌からの日帰りバスツアーは様々な旅行会社から多数のコースが出ている。自分で行けば好きな場所へ自由な時間配分で出かけられるが、観光バスで連れて行ってもらうのも気楽で楽しい。札幌近郊酒巡りというのもある。ビール工場、ワイナリー、酒蔵をはしごして試飲を繰り返す。さすがに一日酒浸りでバスに揺られるのは苦行とも思えるが。

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉事業所勤務。
今年は地面を蹴って羽ばたく年に。
就寝前の読書は最近暫く敬遠していたフィクションの世界に浸っている。

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