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エッセイSP(スペシャル)

夏みかん

吉田 政勝

2016年5月30日

 5月23日に宅配便が届いた。ダンボールの箱を開けると「夏みかん」だった。柑橘系の甘酸っぱい匂いがした。送り主は静岡県松崎町雲見の民宿「長右ェ門」の高橋さん。昨秋の伊豆旅行でお世話になった方だった。
 2週間ほど前に、私の近況を手紙でつづった。贈り物は「夏みかんを食べてがんばって」という思いが込められていると想像し、胸にしみた。
 3月に風邪をひいて体調をくずした私は内科で点滴をうけ、薬を服用した。その薬の副作用か、あるいは他の要因なのか、今度は背中一面にジンマシンが発症した。皮膚科から指示された薬を2ケ月ほど服用するうちに治った。そんな内容の手紙を書いた。うれしい贈り物だが、同時に相手に余計な気を遣わせたと反省もした。
 さっそく夏みかんを食べた。口に甘く酸っぱい味が広がった。高橋さんの顔と伊豆の風景が脳裏に浮かんできた。昨年、私は「流転・依田勉三と晩成社の人々」を自費出版した。帯広開拓の祖である依田勉三は伊豆松崎町の出身である。その松崎町の小・中学校で講演を依頼された。生徒たちに依田勉三を理解してもらうためにも、微力ながら講話を引き受けた。
 昨年の松崎訪問の講演会を企画してくださった松本晴雄さんと協力者の二人と夜の食事に案内されたところが海の近くの民宿「長右ェ門」だった。漁師が経営する民宿で、採れたての伊勢エビやアワビが目の前で動いていて鮮度抜群であった。魚介類が次々と目の前に並んだが、歓談も盛り上がり、おいしい料理を食べきれずに残してしまった。
 一夜の会食だったが女将さんと娘さんの肌理のこまかい応対に感激し、後でお礼の手紙を出した。すると女将さんから返信があり、次女が小学生のときに帯広との姉妹都市交流に選ばれて十勝訪問をしたと書いてあった。また、高橋さんの実家(岩科)の周りでも晩成社で働いた子孫が住んでいる、と記されていて驚いた。自著「流転~」の注文があり5冊送った。暮れに女将から椎茸が贈られてきた。裏の山から採ってきたという。
 近くの海で漁をし、自給の野菜を作り、初夏には夏ミカンを枝からもぎ取っているのだろうか。そんな光景を頭に描いて感嘆するのだった。 

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。「流転・依田勉三と晩成社の人々」刊行。

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