2016年9月 5日

　最近ある歌舞伎役者のブログを見るのが日課になっている。歌舞伎を観劇したことは一度もない。知識も一切なく、日本のこの伝統芸能は私にとって残念ながらとても縁遠い分野でしかないけれど。彼の人気は高くファンも多い。ブログのフォロアーも芸能人断トツトップとのこと。数年前女子アナと結婚した時も、暴行事件で世間を賑わした時も、若い妻が重い病に侵され緊急会見をした時も、若くして波乱万丈な彼の人生は大変だなあと感じたくらいで、それ以上の強い関心は湧かなかった。
　私の働く社会福祉事業所では昨年開所後間もなくブログを始めた。パソコンの得意な職員がいないので、私が担当することになり時々更新している。最初は立ち上げたばかりの事業所を少しでも多くの人に知ってもらいたいとの気持ちから、事業所の紹介が主な内容だった。それから事業所で制作している様々な商品の紹介。そして展示販売会のお知らせ。デジカメで写真を撮ってパソコンに取り込みブログを作成する。取り込んだ写真はファイルに名前を付けてフォルダごとに保存もするので結構手間暇がかかる。一日がバタバタと過ぎていくとブログの事なんかすっかり忘れている。気づくと数週間ほったらかしになっている始末。内容もマンネリ化してきて徐々に面倒になってきた。
　発信するのも大変な労力がいるものだと思った時、そういえば他人のブログをあまり見たことがないことに気付いた。一体どんなこと書いているのだろう。たまたまインターネット上にブログのランキングが目に入り、アクセス数ナンバー１という彼のブログを開けたところ何だか楽しくなって、日々訪問している次第だ。長期休暇中の彼のブログには、パパである彼と二人の幼子とのほんわかした日々が写真で綴られている。コメントはごく少ない。特別な事があるわけではない。近所に買い物に出かけたり、ジムに通ったり、子どもと散歩に出たり。毎日朝から晩までの彼のプライベートタイムの報告を目にすると、雲の上の存在でありながらとても身近な人に感じてしまう。初めて味わう不思議な感覚。二十四時間テレビに登場した時思わず「あっ」と、まるで知り合いを見つけた気分になってしまったのが滑稽だ。
　フォロワーが多いことで彼には相当額のブログ収入があるとのこと。私生活を切り売りしている感も歪めない。ブログには一切のコメントはないが、入院中と思われる夫人の現在の病状も気になるところ。どうか最悪の事態は避けられますように。