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エッセイSP(スペシャル)

友との再会

吉田 政勝

2017年7月24日

 連日、暑い日がつづいていた。
 その日も36度の灼熱が真上から照っていた。洋菓子店の椅子に腰掛けてソフトクリームを食べて、店を出た。西へ向って自宅へ帰るつもりが、急に左へハンドルをきった。大型スーパー内のauショップに寄ろうとした。5月にスマホデビューして、店員に訊きたいことがあった。
 店内に入ると「・・・ちゃんでないか?」と声がした。パーソナルネームやあだ名で呼ぶのは親しい間柄だ。呼んだ男の顔を見た。少し間があった。「・・・・!」とHの名字を略称で呼んでいた。不精髭のHは買い物を済ませて店から出るところだった。約10年ぶりの再会だった。
 ファーストフード店に視線を向けて「あそこで少し休んでゆこう。何を飲む?。おれが頼むから」と私は飲み物を運んでテーブルでHと向き合う。「元気だったか」私は訊ねた。
「体は大丈夫だ。…今の医療は薬を過剰にのまされ、本当に患者のためかどうかわからんさ、ダメダメ」と即答した。私はその物言いに安心した。
「Nが亡くなったが、葬儀が終わって知った」と彼。Nは2人の共通の友人だ。「小さなおくやみ欄でNの葬儀を知り参列した。骨も拾ったよ…。療養していたことも知らなかった」と私。
 還暦前後で私の友たちは癌に命を奪われていた。喪失感と無念さが残り、逆に命の輝きを意識するようになった。
「まだ仕事するの?」と私。
「なかなか辞めさせてもらえない…」という彼はTホテルに勤める料理人だ。大学を出て1年間料理学校へ通い、札幌のGホテルに勤めた。同僚がシェフとして名高い三國清三氏だった。
「お互いに時間ができたら、気ままな旅でもしたいな。おっさんでも乗り継ぎできる青春切符を手にしてさ」と笑いながら提案した。
 彼は親の家業を継いだが時代の需要が変わり店を畳んだ。派遣などを経験して料理人として勤めてきた。私もまた自営の後で変遷をくり返し、今は新聞記事を書いている。お互いの人生をふり返り語りたいことが多い。
 彼の新住所の電話番号をメモして席を立った。2時間ほどの歓談がたちまち過ぎた。気のおけない友とは、忙しい時間をやりくりしても会いたくなる。

◎プロフィール

私は身長約180センチ。体重70キロ。憧れの高倉健と同じだ。秋に帯広で高倉健展があるのが今からたのしみだ。

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