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エッセイSP(スペシャル)

渇望するはじける夏の世界

梅津 邦博

2018年7月 9日

 6月、初夏を迎えた。4日、いきなり真夏日になり、その日帯広は日本で一番暑い34度だった。凄いなと熱さを自慢に思い、楽しくていい気分がした。日本一暑い帯広という日は年に1~2回はあるんだったかな。夏は空間が熱気にあふれていることが最高のステージである。
 人生を生きると齢とともに仕事や健康問題などさまざまな生のありようがあって、季節というものに対してストレートに向き合うことが時には難しいことがある。季節の中におけるそれぞれの確信的なところに遭うと慌てているようなさまがある。
 長い冬が終わる頃のそわそわ感は、ウインターシーズン中は仕事の成績が良くないせいで来たる春を迎えてなんとかやっていけるだろうかと思うところがある。ぐんぐんと燃えるような夏の鮮やかさには波長を合わせて一生懸命に生きなくてはと思うのに、若くないせいか出遅れて取り残されている感がある。やがて夏はいつの間にか急降下して、気付けば秋に被せられてきているような気がする。置き去られてしまったかのような日々にあって、もう冬が目前で顎の辺りでは肌寒さがただよいはじめていた。毎年いつもそんな感じではないのか。
 社会や大人とかなどの規範的なものがあるだろうが、あえてそれ以前に男は本来少年ではなかったか。なのに社会に順応してしまった男が多くてつまらない。ぼくはどこかで永遠に少年でいたいな。いい歳をしてもどこか青臭いところがあってもいいのだ。
 なんといっても今は夏なのだ。何かしなければという思いが湧いている。金色に耀く強烈な陽射しがぼくを煽り、空間は青白く眩しさにあふれて街もきらめいている。公園の噴水や蛇口からほとばしる水飛沫からはじけ散る光。ビルのガラス壁面に吸い込んでいる太陽からの日射しに、交差点で信号待ちをしているお年寄りやOL達の額には、うっすらと汗がにじんでそれははずんでも見えるのだ。陽射しがぼくを強烈に煽り立てているのだった。そんな世界へと向かって行こうとして足踏みしている。それでいい、理屈なんていらない。
 夏は、映画だって佳い作品に巡り合えることもあるのではないか。そうだ、「青春18きっぷ」を手にして列車のタラップに足をかけたい。楽しいだろうな。それともかつて20歳の頃に独り旅をしていたところを廻ってみたい気もする。そうしてその後の至らない生き方をしてきた自分を振り返ってしまうのだろうか。どこか湿っぽい気分もしてしまうだろう。出発したとたんに現実を背負ってしまうはずでたまらない。のしかかるそれを置いて行きたい。とにかくこのまま無為にしたくないとは思っているのだが…。
 7月に入り、天候不順で大雨が続いている。気になってしょうがない。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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