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エッセイSP(スペシャル)

サマーカジュアルスーツ

梅津 邦博

2019年6月10日

 夏は燃えるような輝くような弾む季節であって、スーツもサマーカジュアル的なスタイルで着こなさなくてはならない。TPOもあるが、いつまでもビジネススーツばかりでは息が詰まってしまいかねない。自らの世界を演出してゆくにあたっての準備が必要で、そのためにはどういう感覚と環境があるのかということを認識してゆく。
 青い空と太陽の下で着るスーツはトロピカル的なものでひとつのスタイルを考えたい。生地はホワイトかライトブルー辺りを選び、デザインはシングル二つ釦ツーピース、ノッチラペルにセンターベンツに袖釦3個、パンツはノータックでベルトレスのループなし、というところを選択してゆく。そういうふうにしてさまざまな情報や思いのなかで動くことが必要なのだ。自分の街でそんなスタイルに合う場所的なところは少ないかも知れないが、しかし着用する環境や場所というものは自分で決めるもの。それなりの中でファッションを愉しまなくてはならない。
 帯広・十勝は、5カ月近くも寒い日が続き、極寒の時はマイナス20度以下へと下がることがある。それだけに夏への想いがあり、その夏は高く銀青色の空から金色の陽射しがふりそそいで気温も30度以上へと上昇して鮮やかである。そんな光景のありようを踏まえた上で非日常性も含まれたスタイリングを楽しみたい。
 スーツ以外のアイテムは、あるもので間に合わせるのはちょっと、ということもある。重要なものはシューズで、足元はとても大切な部分でもある。新しく作るスーツに合わせるためにふさわしい靴を買いたいと思っている。4月に出張で上京した際に新宿でいくつかの店を視て廻った。翌日伊勢丹本店近くの「A」に入った。白のカジュアルシューズタイプのホワイトモカシンを手に取ってスーツとソックスとの組み合わせ具合を図り、試履きし、甲の辺りとか爪先やソールの当たり具合などを確認してみる。これならいいかも知れないなと思って購入した。自分の内側で柔らかく満ち足りた心地があり、靴もデビューを待っている。
 生地を、デザインを、決めて作らなくてはならない。光が夏に向かって少しづつ強くなってきているのだった。
 出来上がったスーツを身にして、街を舗道をリゾート地を歩くその世界観においてはどういう光景が見えるのか、と想像しながら推し量って想う。本当は出来ることなら、ヘラルド映画不朽の名作「太陽がいっぱい」のロケ地としてつとに名高いナポリのイスキア島やイタリアの古い街並みとか、スペインの港町などへ行ってみたいとも思っているけれど。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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