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エッセイSP(スペシャル)

高齢者世にはばかる

冴木 あさみ

2020年7月 6日

 『昼カラ』という言葉を新型コロナ関連の報道を受けて初めて知った気がする。感染者数ゼロキープの県が多い中、北海道の『昼カラ』でのクラスターとは...。カラオケは健康にいい。大きな発声でストレス発散。咽頭の筋肉と肺を鍛え人との交流の刺激は認知症予防にもなる。図書館とパークゴルフ以外に、昼間から元気に集える場を得ていたとは、高齢者も隅にはおけない。
 ところで高齢者とは何歳からをいうのだろう。
 国連では60歳以上を高齢者、80歳以上を後期高齢者。WHOではそれぞれ65歳以上と、80歳以上と定義しているらしい。国によって平均寿命の差があるので、長寿国日本ではしっくりしない。今年還暦を迎えた私自身「自分はまだ高齢者ではない」と強く主張したい。年金や何やらの便宜上の区切りはあっても、はっきりした定義はないと思う。ステイホームにアフターコロナ、ウィズコロナ。やたら英語を使っているのだから、ここはシニアと呼ぶべきかもしれない。
 今世紀初の感染症パンデミックで、改めて感じたのは高齢者の生きる強さと傍若無人さだ。それは初期のマスク争奪戦から顕著になった。最も必要としている就労世代を差し置いて、連日朝一番でドラッグストアに並び買い求める。千枚手に入れてもなお、むさぼり続けるものだから、知人は「いったい何歳まで生きる気だ」と怒り心頭だった。不要不急の外出を避ければマスクなど何枚も必要ない。
 特定定額給付金の時もそうだ。我先にと押しかける市民で区役所は三密状態。
「年寄りは後回しか!」
 どこかで高齢者の怒号が聞こえたとか。厚かましさはさておき、その逞しい生への根性は若者が見習うべきだろう。
 高齢者よ。突然失職した人や休業を余儀なくされた働く世代の生活をおもんばかり「自分は後回しで結構です」と言うべきです。申請者全員に給付されるのだから鷹揚に待つのが正しく美しい老人の姿です。大きな戦争を生き抜いてきた先達たるものが、十万円に殺気立つこともないでしょうに。
 日本人は謙虚で礼儀正しく勤勉で、お釣りを誤魔化すこともなく安全で清潔で、おもてなしの心をもった民族と海外に印象付けてくれたのは、今の後期高齢者の皆さま。私たちは受け継いできたつもりですが、子らにまで伝えきれなかったかもしれない。
 リスペクトする先輩は少なくとも、反面教師となる者は街中にうじゃうじゃいる。生きているうちに学ぶことは多い。人生の終盤に醜態を見せるものではないと、深く心に刻みたい。

◎プロフィール

自粛期間を経て価値観が変わった人も多いはず。大切なものってそれほど多くはないんですね

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