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エッセイSP(スペシャル)

名門「佐藤ほねつぎ院」

梅津 邦博

2021年6月14日

 光南小学校時代の同級生にほねつぎの息子で幸宏がいた。どこか温和しく真面目で親しみもある。当時彼の家へ遊びに行ったことがあり、家といっても治療院と住宅が一緒のかなり大きな敷地で、全体にL型のような建物だった。仲通側が院の入り口である。入って行くと広い診察治療室で、奥の方は怪我をした患者が何人もいる入院病棟であり、その内側は中庭になっていた。さらに行くと食堂などで家族や療術師たちの休憩室もあった。どこかなんとなく松竹映画にでも出てくるような療養所みたいな感もあった。
 ある日、転んで膝をぶつけて怪我をし、ほねつぎ院へ行った。治療を終えると気儘に病棟沿いの廊下を歩いて行くと、奥の部屋の窓際で、鼻の下の髭を蓄えてピンと張っているジイサマ先生が椅子に座っていて、眼が合った。眼鏡の奥の眼がキッとなってこっちを見ているではないか。その怖い目にぼくは動けなくなり、しかしゆっくりと頭を下げてそそくさと引き返していった。
 (今にも怒りそうな感じに見えて、おっかねえジイサマだな...と思った)

 病院もほねつぎ院も怪我などしたら治療や入院するのは同じだ。例えば転倒して肩を怪我をしたら、副院長の全徳先生は患者を横向きに座らせ、肩に白布を掛けて片方の手首をかるく掴んで少し斜め後ろから肩の状態を触診し、撫でる、押す、腕を動かしてみる。そうして患部の状態により、灰黒い湿布薬を張って油紙を被せてテープで留め、包帯をする。何度か張り替えて症状が良くなるとマッサージに掛かる。片手首を掴みながらもう片方の掌で患部を撫でたりなど行き来するそれは心地良い。刺激することで血行が良くなって自然治癒力を促すということなのだろう。
 昔、佐藤ほねつぎではアキレス腱が切れた怪我人の両方の腱を引っ張って繋いで治したということを聞いたことがある。凄い話だ。
 初代院長栄吉氏は山形県からやってきて開院した。二代国男氏は帯広市選挙管理委員長を長年務め、三代有宏氏は治療院経営と共に関連業務にも尽力し、選挙管理委員長も務められた。現在四代目は倫一氏である。代々長男が務めており、三代目の弟である副院長全徳氏は元北海道柔道整復師会理事を務められて現在は十勝支部相談役でもあり、そして現院長をサポートされている。
 骨格や筋肉などに異状を感じれば外科病院で診てもらう人ばかりではなく、ほねつぎ院へ行く人も多いだろう。施術を受けるのだが、身体状態を触診してマッサージ他治療を受けるというそれは、生活や活きるということなどから発する皮膚感覚などを通しての信頼感によって気軽に向って行こうとするものではないか。それは病院とは違った魅力がある世界なのだった。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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