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エッセイSP(スペシャル)

雪おんな・・

たかやまじゅん

2022年1月31日

 雪のない温暖な土地で育った私は、子どもの頃から雪だるまを作るのに憧れ、ニュースで雪の便りを見るにつけ、行ってみたいと思っていた。それが今では、雪の朝に家の前で雪かきをする生活となり十数年経つ。日によって雪の降り方、時間で違う雪質なども分かり、一過言持つようにもなった。
 この雪を津軽で太宰治が、つぶ雪やわた雪など七種で表し、歌の文句にも唄われている。この純白の雪は、喜びと悲しみ、悩みや苦しみもすべて覆ってしまう。雪は人の生活と密着しており、過酷な寒さは筆舌に尽くしがたい。昔から日本各地に伝わる雪女とか雪女郎の話が生まれたのではなかろうか。小泉八雲が「怪談」で綴り、映画化もされていた。
 かつて勤めていた頃、仕事先からの帰り道で大雪に遭遇した。車のフロントガラスには暗闇の中から雪が襲い掛かり、まるで髪を振り乱した雪女ではないかと想像してしまった。いま早朝から始める雪かきは、薄暗い街路灯の下で身体中は雪まみれ、手袋さえも凍れた感触になり、これは冷たい雪女の仕業ではないかと思えてくる。
 雪の冷たさで思い出すのが映画「八甲田山」。これは明治時代の青森で、雪中訓練中に起きた連隊の遭難を描き、会社の研修の際にこの映画を観せられた。物語には仕事を進める上で上司と部下、指揮官や管理職、本社と事業所などそれぞれの立場での上意下達、意思疎通が描かれ、研修の参加者が内容を分析しレポートに纏める格好のテーマとなっていた。
 映画の後半、兵士だけでなく指揮官までも一人また一人と倒れていく厳寒の遭難場面は、観ていても身体が冷たくなるのを感じ、実際はもっと悲惨な状況だったと想像に難くない。いまの私の周りには、雪かきの用具と防寒具に使い捨てカイロなど寒さへの装備は事欠かず、一息入れるのにホットな飲みものさえもある。
 そして幕末、北海道の沿岸各地に諸藩から派遣され、粗末な陣屋で過ごした侍たち。時代が明治となり屯田兵や開拓として北の大地に住み着いた人たちが、寒さと共に生きたことに思いを馳せると、ひょっとしたら雪女に遭っていたのかも知れない。
 確か雪女は冬の季語で俳句もたくさんあるそうな。この雪おんなは、世にもまれな美人だそうで、願わくば一度逢ってみたいものだ。

◎プロフィール

〈このごろ〉多国籍ヴォーカルグループ「イル・ディーヴォ」のひとりで、バリトンの声が印象深いスペイン出身のカルロス・マリン、53歳で逝く。

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