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エッセイSP(スペシャル)

修める··

たかやまじゅん

2024年6月17日

 五月の新緑を求め古都を訪れた。今やどこの観光地も海外からの旅行者で溢れ、擦れ違うにも一苦労する。その中で奈良の東大寺や興福寺の参道は、修学旅行の生徒たちで賑わっているが確りと2列で引率され、行く手を阻まれることはなかった。
 彼らは奈良国立博物館の『空海 密教とルーツとマンダラの世界』で、展示の一つ一つを食い入るように見つめ熱心にメモを取っている。その姿を目の当たりにするとかつての修学旅行の日々が浮かんで来る。
 小学6年の時は日光の東照宮で、〝見ざる 聞かざる 言わざる〟の三猿の教えや左甚五郎作と伝わる眠り猫の謂れを智った。バスの中で、テレビのCMにあった見栄を切る仕草の「日光、結構、大和観光~」と真似をして大いに盛り上がったものだ。
 やがて中学では京都と奈良であり、京都嵐山を背景に学生服でポーズを取ったモノクロ写真が遺っている。その頃は一クラスに50人おり、学年全部で15組あった。最初のバスが見学地に到着しても最後尾の車両は遥か彼方であり、今のようにスマホやネットもなく引率する先生の気苦労は絶えなかっただろうと時の流れを感じる。そして高校は南九州を廻り、多数のカラー写真がアルバムのそこかしこに貼ってある。
 まだ個人や家族で旅行することは少ない頃で、仲間たちとの旅行こそが、見知らぬ土地の文化や歴史を修める機会となった。バスに乗ると、童謡や歌謡曲が載った〝ガリ版刷りの歌集〟が配られ、車が走り出すとバスガイドさんの合図で始まり、まだバスにカラオケがある筈もなくアカペラでの歌合戦となった。
 数ある歌の中でも、高校三年生に続く舟木一夫さんの大ヒット曲『修学旅行』は、誰かがイントロを唄いだすと男子や女子を問わずいつしか車内は大合唱。この歌は今でも諳んじていて、口ずさむと当時の景色やあの顔この顔が次々と甦り、まさにこの曲には純粋な青春の記憶が全て修められている。
 時は移り最近は年に数回ほど独り旅に出る。そこで見聞きした光景の数々は、あの頃と同じようにこころの糧となって修まり、書くことや喋ることに活かしてきた。

◎プロフィール

〈このごろ〉我が家にエアコンが付く。これまで団扇に扇風機、そして冷風扇で凌いできたが、年々増す猛暑に耐え切れず快適さを求めてしまった。

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