しばらく・・
2025年1月27日
節句の段飾りで、四角い大きな袖の衣裳で左手に扇持ち、右手を刀の柄に掛けて顔を赤や黒の派手な化粧を施した人形があった。
これは武士のように強い子に育ってほしいと願いが込められたものと教えられる。後に、歌舞伎十八番『暫』の主人公で、意に従わない者を斬れと家来に命じた主人に対し、「しばらく~しばらく~」と待ったを掛け、颯爽と助けに登場する平安時代後期の武将鎌倉権五郎景政がモデルだと識った。
しばらくとは、「ちょっと待て」のことであり、日常でも何かを頼まれたり、買い物をする際に「「しばらくお待ち下さい」と使われていた。これはあまり時間の掛からない少しの間の一時的な意味で、英語では「just a moment, please.」になる。
いま雪の季節を迎え、その片付けで家の前を通る人と1年ぶりに顔を合わせると、たいがいは「しばらくぶりですね」と口にしていた。日頃から歳と共に月日が過ぎるのを早く覚えるようになり、この言葉に違和感を感じることはない。
因みに「ご無沙汰」だと、数カ月から半年以上連絡していない場合で、長らく会ってない人と手紙やメールでの書き出しの時に使っている。そして「久しぶり」は、人間関係の状況に置いて長い間途絶えていたことを示すそうな。『お久しぶりね・・あれから何年経ったのかしら~』と歌の文句を思い出す。
こうして続いた出会いの中で、春を迎える頃になると「引越する」とか「移動が決った」と挨拶してくれた人もいる。反面、今まで見知った顔を見ないとどうしているかなと思ったりして、これこそが一期一会なのだろう。
年が明けて寒暖の差が激しさを迎えた。日中融けた雪が夜間には凍って滑る。家の前も雪が少なければ、通る人も歩き易いだろうとせっせと片付けた。いつしか鳥の声や風の流れから雲の切れ間、また気温で雪質も変わることを識り、今では雪かきのタイミングを計れるようになった。
ここに住いを構えてかれこれ20年経ち、雪模様を眺める日々がしばらく続きそうだ。
◎プロフィール
〈このごろ〉ストーブの前で本を読んでいるとついウトウトしてしまう。そんな時、「本を落とすよ」と家人の言葉を耳にして目が覚める。