
恩 師
2013年3月 4日
病院の待合室で自分の順番を待っていた。先週採血した、その検査結果が知らされる日だった。混雑する待合室で「中村悦雄さん」と呼ばれている。もしや、高校時代の恩師ではないか、と前方を見つめた。椅子から立ち上がり左へと高齢者の男性が歩いていっ

ごほうび
2013年2月25日
深夜勤務は、23時に売り上げの精算をしてから、後片付けである。何かのアクシデントがあると5分10分が、たちまち過ぎてしまう。24時の退社まで時計を見ながらの冷や汗の綱渡りである。 業務が終わると、お疲れさま、と同僚にねぎらいの声を

輝き・・
2013年2月18日
三度目の転勤で帯広を離れるとき、ひとり一人と別れを告げるには時間が足りないことから友人が音頭を取り、送別の宴を張ってくれた。それは仕事以外で知り合った人たちが一堂に会すると言う思い出深いものとなった。 歳月は流れても年賀状での交流
誤解
2013年2月11日
人は言語と感情と行動があることによってさまざまな陰陽が生じてゆく。当然のこと、何かにつけて他人についていろいろと考えたり喋ったりする。その何気ない言動に、不平、不満、批判、猜疑などが見え隠れし、勝手な思い込みによって誤解が生じている場
極寒のある朝
2013年2月 4日
一年前、外科病棟に入院して手術を受けた。そして退院となった。早春が近いその日は朝から落ち着かず、もうあと三日くらいはここにいるべきではないかな、などと思った。身内が車で迎えに来て、家へ向かった。快晴で空間は水色に輝いているなか、車窓か

さよならチビ
2013年1月28日
妻の声が、向かいの家の前を見て、と叫んでいた。いぶかしげにブラインドの間を押し広げて見ると、某動物霊園の名前の車が停まっていた。チビが死んだ、と直感した。 防寒コートをあわてて着ると、私は外に飛び出した。妻も後ろからやってきた。向

磨く・・
2013年1月21日
パソコンを使ったメールが多くなった。文字の小さい携帯より打ち易いからでハンドルネームには、かつて呼ばれていた愛称を用いている。その名は「平次親分」・・謂れはカラオケにある。 名古屋に赴任していたころ十八番はテレビ時代劇の主題歌であ
船のピアニスト
2013年1月14日
十二月、名古屋で用があって苫小牧からフェリーで往復した。一万五千トンの純白の船体にブルーラインが一周して描かれた「いしかり」は、夕焼けの天空に浮かび上がった黒いシルエットの伊勢湾岸自動車道を背景に滑り出した。ゆったりと湾内を進み、太平

サンタクロースになった少年
2012年12月25日
趣味のひとつが映画鑑賞で、家庭でいつでも観られるDVD映画は、忙しい私には好都合だ。過去に観た名作のベスト10をあげるとするならば「道」「欲望という名の電車」「草原の輝き」「エデンの東」「陽のあたる場所」「ひまわり」「老人と海」「ニュ

はーとふる・・
2012年12月17日
毎日、放課後ともなると教室からコーラスが流れて来た。土曜日曜は朝から聞こえその爽やかな歌声に癒され、直に聴ければとの想いで校舎を見上げていた。 たまたま学校の前を通り掛かった時、校門にいた学校の人に「いつも頑張ってますね」と思わず