
四十三年前
2013年3月25日
まちの図書館で本を借りようとして玄関にはいると左側にお知らせのパンフレットが並んでいた。その棚に「高橋揆一郎の文学」という文字が見えた。手にとると、北海道立文学館での展示会のチラシだった。 作家・高橋揆一郎氏は、2007年に亡くな

恩 師
2013年3月 4日
病院の待合室で自分の順番を待っていた。先週採血した、その検査結果が知らされる日だった。混雑する待合室で「中村悦雄さん」と呼ばれている。もしや、高校時代の恩師ではないか、と前方を見つめた。椅子から立ち上がり左へと高齢者の男性が歩いていっ

ごほうび
2013年2月25日
深夜勤務は、23時に売り上げの精算をしてから、後片付けである。何かのアクシデントがあると5分10分が、たちまち過ぎてしまう。24時の退社まで時計を見ながらの冷や汗の綱渡りである。 業務が終わると、お疲れさま、と同僚にねぎらいの声を

さよならチビ
2013年1月28日
妻の声が、向かいの家の前を見て、と叫んでいた。いぶかしげにブラインドの間を押し広げて見ると、某動物霊園の名前の車が停まっていた。チビが死んだ、と直感した。 防寒コートをあわてて着ると、私は外に飛び出した。妻も後ろからやってきた。向

サンタクロースになった少年
2012年12月25日
趣味のひとつが映画鑑賞で、家庭でいつでも観られるDVD映画は、忙しい私には好都合だ。過去に観た名作のベスト10をあげるとするならば「道」「欲望という名の電車」「草原の輝き」「エデンの東」「陽のあたる場所」「ひまわり」「老人と海」「ニュ

霧多布岬へ
2012年12月 3日
仕事の繁忙期で連日遅く帰宅することがある。あるいは大きな計画をかかえて精神的にきつい日がつづくこともある。そんなあわただしい日々を乗り越えるために、私はがんばる自分へのごほうびを設定することがある。 4年前、勤めていた職場は夏が繁

いやしの風景
2012年11月26日
休暇の日は、日常とはちがう風景を見たくなる。長距離で街の信号を何度も止まるドライブは疲れる。やや近い距離を念頭に浮かべていると、南ふらのエリアが魅力的なスポットに思えてきた。秋の休日に狩勝峠を越えて、落合を過ぎると幾寅に至った。

開拓者・鈴木銃太郎
2012年10月29日
図書館で「鈴木銃太郎日記」を読んでいると祖父の名前が載っていて驚いた。百年ほど前に祖父中島和一郎と鈴木銃太郎が交流していたのだった。 鈴木銃太郎は明治十五年に依田勉三とともに、開拓適地を求めてオベリベリ(帯広)にたどり着いたが、勉

ひとりは自由
2012年10月22日
20年前に町の人材育成事業でアメリカ研修に応募して選ばれたことがある。2週間の旅行になるので勤めていたならば長期の休暇申請は無理になる。有給休暇をめいっぱい使い釣りにゆく「釣りバカ日誌」の浜ちゃんは映画の中だけの話だ。 私はその年

深夜の帰宅
2012年9月24日
夜の勤務を終えたのが24時を過ぎていた。車で帰宅する途中だった。霧雨が降っていたので、ワイパーを低速でまわしていた。国道に向かっている、やや左前方の歩道を若い女性が傘もささずに歩いていた。 薄暗い歩道を若い女性が一人で歩く奇異さを