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エッセイSP(スペシャル)

思わぬ展開

吉田 政勝

2012年2月27日

 2月中旬に、釣り仲間である大阪に住むM先生から突然電話があった。「十勝に来てますから、温泉に入って食事しましよう。月曜に帰ります」と言われた。
 土曜日に、SさんとYさんに帯広で4時半に会うことになっていた。帯広へ2回往復するより1日で済ませたかったこともあり、M先生に「土曜の6時半に」とメールを送信した。
 当日、芽室の自宅を出て、国道沿いのファミレスに約束の時間に着いた。Sさんが先に来ていた。ランチセットが5時までだったので先に頼んだ。食べ終わるとYさんが加わった。遅れて着いたYさんともう少し話をしていたいと思いながら、時計を見つつM先生に何度か電話をするが応答がない。3度目で電話が通じ、先に食事しましょう、という展開になった。レストラン「エルパソ」で落ち合い、店に入ると、混雑していて、席が空くまで40分待ちだという。時間を大事にしたいので店を出て、中華の店へ移動した。
 車から降りてふたりで夜空を仰ぎ見たら星が輝いていた。先生は「今は天候がよいから、明日の朝はまた山登りに行くので今夜は早めに帰りたい」と言った。私は当初の話し通り温泉に入るつもりで来ていたが、M先生は早朝の山登りを優先したいようで気もそぞろだ。
 これが男女の関係なら、女性は不機嫌になり、今夜はあなたとゆっくり過ごすためにきたのよ。心ここにあらずで山登りが気になっているのはどういうことなの、と口を尖らかすだろう。
 中華料理店にはいって、すでに軽く食事してきた私はラーメンの半分は先生に分けてあげようと思った。登山帰りで昼食ぬきのM先生は、メニューを見て2品を頼み、チャーハンと焼きそばを小皿にとって私に分けてくれた。その好意を無下にできないと思い食べたが、私は満腹で腹が苦しくなった。結局、M先生と温泉に入って、ゆっくり語りたい、との最初の目論見はかなわなかった。
 この予測とちがう結末を通して、カフカの「城」という小説を思い出した。
 測量技師の男は城の測量を頼まれるが、城へ向かうまで予期せぬ出来事が次々と起こって城にたどり着けない話である。吹雪の夜、男は泊った宿の受付の女と体の関係になり結婚を約束するが、男は他の女とも親しげで、ふたりの仲を邪推した婚約者から別れを告げられる。失意の男に、馬の世話をしてくれたら報酬を与える、という男が現れた。そこで未完作として小説は途切れた。
 人生は予測不能な不条理に苦しめられるというのがカフカの中心的思想だ。
 日頃の生活でも、相手の出方や状況の変化で思わぬ展開になる例が多いし、時にはカフカ的な不条理に見舞われることすら珍しくない。
 

◎プロフィール

親しい間柄のT氏から、あなたは本を出していたのかい、と言われた。さっそく自著の「モモの贈りもの」を進呈。自己宣伝が控えめなために身近な人が知らない現象がおきる。

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