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エッセイSP(スペシャル)

サンタクロースになった少年

吉田 政勝

2012年12月25日

 趣味のひとつが映画鑑賞で、家庭でいつでも観られるDVD映画は、忙しい私には好都合だ。過去に観た名作のベスト10をあげるとするならば「道」「欲望という名の電車」「草原の輝き」「エデンの東」「陽のあたる場所」「ひまわり」「老人と海」「ニューシネマパラダイス」「暗い日曜日」「過去のない男」だろうか。
 さて今年もレンタルでDVD新作を観てきた。印象的だったのは「わたしを離さないで」だった。これは日本生まれで英国に帰化したブッカー賞作家カズオ・イシグロ氏の原作を映画化。孤児として施設で育ってきた若者たちが、やがて生体間移植のドナーとなるべく、運命の日におびえて生きているという話だ。
 「この道は母へとつづく」も切ない映画だった。親が貧困ゆえに孤児院に預けられた少年が、抜け目なく金儲けに徹する養子縁組みの仲介業者から逃れて母をさがしを始める。実話をもとにした感動作で、ベルリン国際映画祭少年映画部門グランプリに輝いている。
 親から引き離される孤児には様々な事情がある。私も幼児のころ親戚に預けられた時期がある。叔父の養子になるという話もあった。妹が生まれて次男の私に食いぶち減らしの案がもちかけられたのかもしれない。昔のことで詳しい経緯は知らないが、貧しいながらも両親のもとで私は育った。
 さて本題は「サンタクロースになった少年」である。ファンタジーかと思いながら気楽に観ていたが、実はちがった。
 両親が不慮の事故で亡くなり孤児となってしまったニコラス少年。貧しい村のため引き取り手がいない。ある村人の提案で、1年交代でニコラスを世話をすることになった。毎年クリスマスに次の家族のもとへと移るニコラスは、お世話になった家の子供たちに手作りの木製のオモチャを置いてきた。
 ある飢饉の年、ニコラスを誰も引き取ることができなくなり、村に物売りに来るイーサッキに引き取られることになった。家具製作を営むイーサッキは、ニコラスの器用さを見込んで弟子として利用しょうという思惑だった。仕事や掃除などに追われて寝る間もおしんでニコラスは働いた。やがてイーサッキが自分の家族の不幸を青年ニコラスに打ち明け、次第に親子のような関係になっていく。
 時は流れ、老いたイーサッキは疎遠だった息子と和解し暮らすことになった。
「工房と資産をおまえに譲る。今まで尽くしてくれてありがとう」とイーサッキはニコラスを抱きしめた。ニコラスが地下室の箱を開けるとイーサッキが貯えたコインや紙幣があった。
 ニコラスはその後も、クリスマスになると村中の家の子供たちにオモチャを置いていった。サンタさん誕生秘話をフィンランドの自然を背景に心温く描かれた感動作であった。

◎プロフィール

 昨年「開拓者鈴木銃太郎と晩成社」のことを調べた成果が秋に冊子になった。まいた種はいずれ実となると実感。

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