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エッセイSP(スペシャル)

恋の交渉術

吉田 政勝

2013年10月28日

 

 

 

 お笑いのトーク番組が好きだ。その受け答えで、芸人の人間洞察や本人の人柄が露出するのでおもしろい。「人志松本のすべらない話」で、ある芸人が「先生が、日が暮れた帰りしなに、学校のプールでひと泳ぎしょうと、眼鏡を外して足から入ったら、水が張ってなかったので怪我した」という信じ難い話があった。何事も状況判断をまちがえると大変なことになる。撃沈といえば、いきなりの恋の告白の失敗も、これに似ている。

 むかし聞いた話だが、ある男子学生が、好きな女子をいきなり教室に呼び出し、「好きなんだけれど、付き合ってくれない?」と告白したとか。女の子は「ありえない!」と返事したそうだ。

 彼の告白は勇気があると称えるどころか、無謀ともいえる。まさに水のないプールに飛び込んだようなものだ。女の子にボーイフレンドがいるのか、彼女の好みのタイプに自分は合致するのか、とリサーチ程度は必要なのではないか。その告白の件は噂として校内をかけめぐったにちがいない。

 はかりごとは密なるをよしとす、という格言がある。私たちの生活や職場などでも、いきなり言うと支障があることが多い。状況を考え、根回しをするなど、事前に相手を知れば、お互いに困惑することも少ないのではないだろうか。

 職場や社会の場で出会う好みの異性に、時々声をかけて、その感触を確かめる。でも、周りに誤解される親密さは絶対にひかえる。話をしているうちに、相手との価値観が似ていて、お互いに好きだという感触があれば交際進行だ。だが、相手の欠点に気づき始めることもある。たとえば、悪友が多い、お金にルーズ、酒グセが悪い、独善で協調性がない、生理的に嫌だ、などと分かったら交際停止を早めに決するのがよいかもしれない。

 お互いの欠点を笑って許せる程度なら、ラブラブ増量だ。だが、愛も過剰になるとストーカーに変質することもあるから暴走を戒めなければならないのではないか。ふたりで過ごすことは必然的に楽しく、たとえば食事をすれば、どんな料理であってもおいしいに違いない。

 一方が大きな仕事や試験などに没頭中で恋愛をさけたい時期もあるだろう。そうであるならば寂しさに耐えて、タイミングが合うまで待つという気持ちも必要なのではないか。また、異性として相手を意識すれば、おのずと、手をにぎる、キスをする、という衝動もあるだろう。そして、その先はいわずもがなである。

 結婚は、やはり生活の安定だから、男性の経済力が肝心になる。経済格差の時代、将来を託したふたりの生活もハードルが高くなってきた。草食系の男子が多いと揶揄されるのは、その障害の前で自信喪失なのではないだろうか。恋はかように難しいが、恋の成就はさらに難しい……。

 

 

◎プロフィール

北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。2004年「モモの贈りもの」エッセイ集発刊。晩成社と鈴木銃太郎の研究家。

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