お・み・や・げ
2013年12月 2日
晩秋の京都を訪れた。
相変わらず多くの観光客で、名所へ向かうバス停は長蛇の列だ。タクシーの運転手がどこへ行けば紅葉を見ることができるか教えてくれて、葉が色づく前の客への心遣いを感じさせてくれた。
以前紅葉真っ盛りの時期に、人の波にのまれ疲労困ぱいした経験から、秋の旅行は最盛期をずらすことにしている。運転手は京都の紅葉を見ずに帰るのは気の毒だと、乗車時間中ずっとその話をしていた。私は滞在中の天気と気温を尋ねただけなのだが、彼は葉の色づきを気にしているのだと勘違いしたのかもしれない。
家を出る時ジャケットを着るか着ないか暫く迷った。空港行きのバスはすぐ近くのバスセンターから出ている。寒い外気の中を歩くのはわずか数分。バスに乗ればそのまま予想気温二十度の京都まで外は歩かない。ジャケットを手に持てばいいだけの話だが、それが嫌なのだ。ショルダーバッグを肩にかけ、両手には何も持ちたくない。
旅行は必要最低限の荷物でという意固地なところが何故かあって、旅行鞄に目いっぱい詰めるのは好きではない。今回は職場にお土産を買う予定もありキャリーバッグの半分を空けた。駅や空港で大きな鞄の他に土産袋をいくつも抱えて歩いている人を見ると感心する。人間関係もいろいろあって、お土産は付き合いのおしるしだ。仲のいい友達へは日頃の感謝。仕事を休んで迷惑かけませんでしたか?というお土産もあれば、ご近所に留守中お世話になりましたというお土産もある。お土産を買う人の性格もあって、ちょっとした日帰り旅行でも毎回買ってきてくれる人もいれば、遠出しても何も買わない人もいる。私は後者であまりお土産を買う方ではない。
私が子供の頃はペナントというのが流行っていた。観光地のデザインが印刷された三角の旗だ。壁一面に貼ってある家もあり圧倒された。次第に飾るものから使えるキーホルダーの時代になった。家の鍵一つに何個もくっつけて鍵とキーホルダーの役割が逆になっているのが面白い。そして携帯ストラップ。種類も豊富で選ぶのも楽しいうえに、お土産としては軽くて小さくて最適のものではないだろうか。しかしスマホの出現でストラップも影を落とし始めている。
お土産は土地が産んだものと書く。やはり時代が変わろうと揺るがないお土産はかさばってもその土地の美味しい食べ物だ。京都の菓子を職場の人数分購入し、キャリーバッグの中に詰めた。原材料を見ると餡の小豆は北海道産。京都で老舗の和菓子に使われ故郷に凱旋里帰りするのだ。
◎プロフィール
さえき あさみ
札幌市在住。障害者就労支援員。人間ウォッチングと街歩きで空想の世界に浸るのが好き。一昔前のサスペンスドラマにはまっている。