知己・・
2013年12月16日
浜松で三十数年歌手をしている浜北弘二さんから、歴史歌謡「戦国武将(もののふ)列伝」のCDが届いたのは春のことであった。夏にはお孫さんを連れご夫妻での来札。初対面にも関わらず歴史談義で意気投合し「現地で家康公を語りませんか!?」と勧められる。浜北さんは水産会社などの事業を営んでいることから、話しは歴史や歌だけでなく多岐に及んだ。
そして秋、早朝の千歳空港を発ち、中部セントレアで直行バスに乗り継ぐと二時間ほどして浜松駅に着く。そこには浜北さんご夫妻の笑顔があった。
先ず案内されたのは、織田信長に武田家内通を疑われことから悲劇となった徳川家康の正室と嫡男の事跡であった。築山御前が斬られた場所は建物に囲まれた道路脇に碑が建つのみだが、往時は池の畔と云う。続いて廟所(びょうしょ)の西来院(せいらいいん)を詣でた後に、若き家康が武田信玄との戦いで、危機に陥った三方ヶ原(みかたがはら)の激戦地・犀ヶ崖(さいががけ)古戦場を行き交う車の喧騒の中に視る。
次は遠州名物空っ風が戦(そよ)ぐ二俣城の天守台に登ると、紅葉の眼下は天竜川の流れが哀れを誘うのか・・、この城で自刃(じじん)した信康と切腹を命じた家康に思いを馳せ、信康が眠る清瀧寺(せいりゅうじ)の祠廟(しびょう)に手を合わせる。十代のころ読んだ山岡荘八著「徳川家康」全二十六巻は座右の書であり、物語の場所を訪れたいとの願いは半世紀を経て実現した。
それぞれの土地には、名所・人物・風物詩が織り込まれた○○音頭や△△小唄がSP盤の時代から今に伝わり、最近は収集家や研究者によりCD化されている。昭和の歌謡史に詳しい仲間から「浜松の歌を集めたCDがあるそうだ」と報せを受けた。
調べると浜松音頭や浜松小唄などを収録した復刻盤「遠州・濵松の唄」が見つかった。発売元に問い合わせると、制作された城内実氏が電話口に出られ「ふるさとの文化をいま残さないと失われてしまいます」と思いを語られた。
近々浜北さんを訪ねることを告げると「過日お会いしました。郷土の歴史を熱く謳(うた)う方です」と返ってきた。城内氏はSPレコードのコレクターであるとともに、浜松選出の衆議院議員であった。「生憎、会期中で地元に戻れず残念です。何れ時間を作って語りましょう」と約束を交わした。
今回、時を同じく浜松出身のおふた方と歌を通じて知己を得たことで、また新たなネットワークが生まれる。
◎プロフィール
〈このごろ〉旅先で友人の訃報が入る。歳はふたつ下であった。半月前に昼食をしたばかりで声高の話し声が今も耳に・・