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エッセイSP(スペシャル)

昭和の歌

吉田 政勝

2014年3月24日

 3月中旬に雪が降っていた。本格的な春になるまでに、あと2~3度は雪が降ることがあるだろう。窓の外を見ながらラジオを聴いていた。
 リスナーの意見が届いた。
「2年間つきあっていた彼女と今、別れました。5月にディズニーランドへ一緒にゆこうと約束してました。指輪も買って渡すだけだったんですが……」
 この男に何があったんだろうと興味がそそられた。
「結婚したら子どもがほしい、と私が希望すると、彼女は子どもは産みたくない、と意見がくいちがいました。ショックです。私を励ましてください」との内容であった。そして、流れてきたのが都はるみの「好きになったひと」。~さようなら、さようなら、好きになったひと~選曲も妙にはまっていた。
 他人ごとで考えれば笑えるけれど、当人にとっては破局は深刻だ。愛が強ければ、ふたりの前に立ちはだかる障害を越えてゆける。いや、そうかな?問題が些細なことではない。
 彼女と別れるのは、さぞつらいだろう。人生の挫折、失恋そんな時は、私は演歌の世界にひたるようになっていた。幸せうすい~、いつか来るのね女の春が~甘えたいのよいつの日も~。歳をかさねて、人生の苦楽を体験し、義理人情がわかると、やはり日本人には演歌だと思うようになった。
 いまだから、そう思うが、若いころは私も欧米の音楽を聴いていた。70年代のころが記憶の底からなつかしく浮上してきた。
 思春期の私はラジオから流れてきた外国の曲が新鮮だった。ビートルズはもちろん「夢のカリフォルニア」や「花のささやき」などの洋楽に心奪われた。
 洋楽を日本語で歌うジャンルがあって、イタリアの音楽祭に入賞した伊東ゆかりが好きな私は「星を見ないで」や「朝の口づけ」の歌を聴きながら大人の恋を夢みていた。
 その和製ポップスで、有馬三恵子、安井かずみ、岩谷時子などの才能が開花した。その後、なかにし礼、阿久悠は一時代を象徴する名作詞家となった。テレビやラジオから歌が流れていた。
 その阿久悠は「いつしか歌が飛ばなくなった」と生前述べていた。大衆文化が分散されていったパラダイムなのかもしれない。みんなの歌があった時代の心の豊かさを意識し、歌の詞の素晴らしさに心酔し、それらの歌が日々の暮らしを彩っていた。恋の歌もあれば失恋をいやしてくれる歌もあった。右肩上がりの経済を伴奏してくれた歌の数々にあらためて感謝したい気がした。
 

◎プロフィール

北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。2004年「モモの贈りもの」エッセイ集発刊。晩成社と鈴木銃太郎の研究家。

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