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エッセイSP(スペシャル)

粗 食

冴木 あさみ

2014年4月 7日

 「なにか美味しいものを食べよう」
 休日の昼は外食したいと思う。私の職場は昼食に弁当が出る。早起きして弁当を作らなくてすむのでとても助かるのだが、少ない予算ゆえに中身にそう期待はできない。それでも工夫次第でもう少し何とかならないかと思う時もあるが「だったらあなたが作って」と厨房に移動させられるのも怖いので黙っている。事業所に通う利用者からもしばしば不満が出て、自分でおにぎりを持ってきたいという声もある。しかし個人の自由に任せると人によって食事の内容に差が出てしまう。中には持参できない人もいるかもしれない。全員が平等に同じものを食するというのがこういった福祉事業所の通例になっている。障害によっては三食きちんと食べるという意識すら持てない人もいるのだ。幸い該当するような人は現在いないが、昼の一食だけでもバランスの取れた栄養を摂取してもらう意味もある。
 土曜日の夜は一週間が無事に終わった安堵感に浸りながら、簡素な惣菜を肴に少し日本酒などを飲む。明日はどこかで豪華な昼食をとろう。ステーキがいいかな、それともお寿司。フレンチも久しく食べてないなどと、休日の過ごし方を考えるのも一つの楽しみだ。
 さて、楽しみな日曜日。昨夜のあのウキウキした気分はどこへ?若干八時間の夜を経ただけで気持ちがこうも変わるのか、外出すら面倒になる。ネットでグルメ情報を引き出すが「ここだ!」という店もメニューも見つからない。平日の仕事の緊張感が緩むと胃の活動も止まるのか。デパ地下を歩いてもなかなか食指は動かず、逆に目だけで満腹になってしまう。結局近所のスーパーでありふれた食材を少し買っていつもの食事をする。こんなことを毎週繰り返している。
 ずっと「生きるために食べるのではない。食べるために生きている」と豪語していた私だが、いつからか食への関心が薄れてきたような気がする。
 グルメ番組も以前より少なくなり、粗食を勧める本も出版されている。健康で長生きしたければ粗食と適度の運動をと言われると中高年は生活を見直したくなる。戦争を生き抜いてきた高齢者は九十、百まで長生きしているが、飽食の時代を生きてきた世代が長寿国の国民だからといって同じように長生きできるとは限らない。意識して粗食にしたいわけではないし、まして長生きしたいとは思っていない。でも食に走るようなストレスは抱えていないのだと自己分析し、これはひとつの心身の健康診断にもなっている。
 明日からまたあのお弁当か。でも最近それほど不満を感じていない。
 

◎プロフィール

さえき あさみ
札幌市在住。福祉施設勤務。
写経・手話の勉強・南の島への旅行が今年一年の計。

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