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エッセイSP(スペシャル)

サッカー熱中派

吉田 政勝

2014年6月23日

 日曜日の朝、買い物を頼まれた。妻は「開店はいつもの9時ではなく8時30分になっているから」と念をおした。私は瞬時に「10時からサッカーがあるからだ」というと、妻は首をかしげた。
 私はW杯テレビ観戦するために、買い物は早めに終わらせたかった。店内に入り、店長の姿をみつけると「今日は開店時間がいつもより早いのは、サッカーの試合があるからですか?」と問うと「ええ、そうです」と笑顔で答えた。図星だったのである。
 たしかに、サッカーW杯の日本の試合はテレビ視聴率も上がる。多くの人がテレビに釘付けになるせいか、街を走る車の数が減り、若者がいそうな場所から人影が少なくなる。ちなみに日本対コートジボワール戦は関東地区で46%という平均視聴率がリサーチされた。
 自分がサッカーのW杯の試合に関心が強くても、あまり関心がない人も周りに多い。この人はサッカーに関心がありそうと思い「いよいよW杯の初戦ですね」とメールすると「あまり関心ないよ」と返信があり、拍子ぬけした。
 以前、勤めていた職場でも、サッカー熱中派と無関心派がいたのを思い出した。サッカー派の人には遠慮なく話しかけられた。「縦パスもいいけれど、サイドのスペースもいかしてほしいね」「やはり体力差かな。日本選手はプレスが弱いよね」などと知ったかぶりもできた。
 さて、今年のW杯初戦だ。日本は早くも本田の先制ゴールで勢いがついたものの、後半は相手のパス回しが早く日本選手は振り回され、疲労が激しいようで足も止まり、2ゴールを許して逆転負けをした。次の試合に奮起しないとブラジル大会は早々と予選敗退してしまう。
 試合を振り返るために、また夕方のテレビニュースを見てしまう。解説者や応援の人々の意見も聞きたくなる。元日本代表のラモス氏が怒気をふくんだ声で「1点目を決めてから消極的になった。2点目を積極的にとりにゆけばよかった」と言う。
 日本サッカー協会の理事は「ザッケローニ監督は、選手としても監督としてもW杯代表の経験がないのが不安だった。その不安が露呈してしまったか……」と述べた。今さら、それはないだろう。選手交代も戦術も監督が決めるもの。今後の日本選手の奮起を期待したいと思った。
 試合が終わって悔しいはずの、日本のサポーターはスタジアムを去ろうとしなかった。ブルーの袋を手に会場のゴミ拾いをしていたのだ。各国、特に中国のネットには「日本のサポーターのマナーはすごい!」と賞賛の声がつづいた。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。エッセイ集「モモの贈りもの」発行。晩成社の研究家。

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