集う・・
2014年10月20日
江戸時代に滝沢馬琴が28年の歳月を費やし、わが国で最長編の伝奇小説である「南総里見八犬伝」の刊行が、文化11年(1814)に始まり200年の節目にあたる。新春の国立劇場では尾上菊五郎丈を筆頭に、通し狂言での上演が発表された。
愛用の腕時計は10年ほど前に館山から通販で買った。文字盤は数字ではなく「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の八つの文字が集まっている。
東京駅を後に高速バス「房総なのはな号」は、開業50年を迎えた東海道新幹線の大井車両基地や羽田空港を車窓に海底トンネルのアクアラインを抜け、秋の日差しに映える東京湾を跨ぐアクアブリッジを奔ると1時間48分で「南総里見八犬伝」のふるさと館山に着く。
この夜、4年ぶりの再会となるのが辰野方哉(まさや)氏で、八犬伝のグッズなどを販売して街づくりを推進している。さらに、八犬伝の資料を網羅する館山市立博物館で、永らく学芸員を務めた町田達彦氏と3年ぶりだ。博物館の岡田晃司館長とは18年になる。
そして、宿を取った幸田旅館の女将幸田右子さんは館山観光協会の役員、腕時計のデザインを考案した実業家の高橋幸民氏、今年で33回を数える「南総里見まつり」のヒロイン伏姫役となる地元出身でシンガーソングライターの文月(ふみつき)メイさん等が初対面となり、八犬伝談義で夜の更けるのを忘れた。
翌日は、町田さんの案内で博物館のある館山城と八犬士のモデルとされる里見の八遺臣の墓や滝田城址、伏姫籠穴、八房の誕生地などを巡る。小説から所縁の地が作られたのは八犬伝だけではなかろうか・・馬琴さんの紡ぐ八犬士の壮大なファンタジーは、今なおアニメやゲームとなって人気が高い。
帰り際に駅前の喫茶店で待ち合わせた里見香華(こうけ)さんは、日本舞踊で里見流の家元。凛とした佇まいは、里見氏の末裔という雰囲気が漂ってくる。
八犬伝の舞台である人達と交流を持てたことは、大きな収穫となった。宴席で「普段顔を合わせるが、改めて集う機会はめったになかった」と誰かが言っていた。これこそが八犬伝の世界であろう。
今回の訪問は、12月に北海道文化財保護協会と紀伊國屋札幌本店が連携し「里見八犬伝展とトークショー」が札幌であり、この企画コーディネートをしていることからであった。
◎プロフィール
〈このごろ〉幼い頃に行った祖母の在所。探し当てたお寺の人は、どことなく面立ちが自分と似ていた。なんと父方の従妹にあたるそうな。