おたる水族館
2014年11月 3日
行きたいなあと思いながらも行けずじまいになっていたおたる水族館。偶然にもこの二カ月連続で訪れることになった。先月は親族の法事の日、夜の会食までの空き時間を利用して一時間ほど。そして今回は職場の日帰りバス旅行で二時間ばかり。
季節は秋。観光客の姿もまばらでイルカやトドのショーは最前列で鑑賞できた。決して大きくはないおたる水族館。展示水槽の数も多くはない。沖縄の美ら海水族館を見てしまった後ではどの水族館も感動はないだろうと思っていたが、小さな施設にはそれなりの楽しみもある。ショーの会場も狭いので間近で見学できるのもその一つだ。
海の生き物達のショーはイルカ・セイウチ・アザラシ・ペンギン・トドと時間をずらして開催され、それを順番に巡るだけで楽しい時間が瞬く間に過ぎていく。パイレーツオブカリビアンのテーマ曲にのって巨大トドが高台から海へとダイブ。大きな水しぶきが舞い観客のおおという声と拍手。ダイナミックな光景を見るのは気分がいい。名前も覚えると親しみも湧き可愛く感じる。
子どもの頃からウサギやネズミ、犬などを飼っていた。フワッと柔らかい抱き心地の動物が好きなので、亀とか魚を飼う人の気持ちがよく理解できなかった。熱帯魚は確かに美しいけれど触ることすらできない。物足りなくないのかな?と不思議だった。でも今は解る気がする。大海に比べたら窮屈な世界ではあるが、水槽の中の魚たちは時には漂うように、そして時には全速力で、なんと自由に気持ちよく移動しているのだろう。
「せかせかした日常からしばし逃れてこんな風に水の中を浮遊したいなあ」
集合時間も忘れてガラスに顔を付けてうっとりしてしまった。
帰りのバスの中では海獣公園まで行けなかったとの不満の声も聞こえた。主なショーの舞台となる海獣公園は、はるか崖の下の海に面した別エリアだ。福祉事業所の一行なので杖を必要とする人も何人かいる。舗装された道とはいえ急な坂道を降りていくのは健常者でも緊張する。足が不自由な人はとても無理な話で数人が断念した。老人も妊婦も障害者も安心して廻れるように施設を改善してほしいという意見。おたる水族館が建築されたのはバリアフリーという言葉も存在していなかった五十五年前のことだ。十分な予算が取れていないのは随所のペンキの剥がれや展示物の老朽から簡単に推測できる。古い館内で生物たちも調教師たちも精一杯の毎日を送っているのだ。税金で改善してほしいものは数多くあるのに、非力な一市民はただ「う~む」と腕を組み唸るしかない。
◎プロフィール
さえき あさみ
札幌市在住。福祉施設勤務。
写経・手話の勉強・南の島への旅行が今年一年の計。