天変地異の世
2015年1月19日
テレビのスイッチを入れると、社会は負の出来事にあふれていた。
不平不満が湯水のごとく溢れ、自意識過剰を通り越して異常な犯罪も多くなってきている。また政治家は、論理というおもちゃを駆使して終始国民の生活と安全を脅かしている。社会もそして自然もすでに崩壊しはじめているとしかいいようがない。人類は多くの問題を抱えて収拾がつかなくなってしまっているのだ。
世界各地でも自然災害が増加して甚大な被害をもたらしている。雨が気圧がジェット気流があるいは海底のプレートがこうでという以前の、もっと森羅万象においてそうしなきゃならない何かの意志があるのではないかとしか思えないのだ。
異常気象などと言われているが、本当はそうではなく、すでに大天変地異がはじまっているとされているのだ。政治も科学もジャーナリズムも、皆一様に現実に見える世界で判断しているにすぎない。
実は、我々が生きているこの世が現界、あの世が霊(幽)界、その上が神界、とされてその三つを三界と昔からいわれている。神界が、穢れてしまっている人類界に見切りをつけるべくすでにミソギハライをはじめているとされているが、そのことを聞く人は鮮少でしかない。
大昔から、見えざる世界が一番大事であるとよくいわれているのだ。万物は波動なりで、悪想念が満ち溢れてくると、その波動によって世界は破滅へと向かう。それから救われるためには、人類は想念から悔い改める以外にない。
1872年に発見されたギルガメシュ叙事詩などの記録によると、かつてその時代の人々は欲にまみれた不浄な想念で悪の華が咲く紊乱な生き方をしていた。それを見ていた神は憂い、哀しみ、遂には怒りを発された。神はノアが義しき者であることを知り、声を掛けた。
〈わたしは地上の命あるあらゆるものを滅ぼしてしまおうと思う。ノア、舟を作りなさい。そしてあらゆる生命の番を舟に乗せなさい…〉
箱舟が完成すると雨が降りはじめた。やがて水嵩が増してきて舟は浮き上がり、流されていった。ノア一族は嵐の中、40日40夜に亘って大海原を漂流していた。その不安はあまりにも恐るべき日々ではなかったか。先年、トルコ国境にあるアララト山で化石化されたノアの箱舟とされる残骸の一部が発見された。そのノアの大洪水があった時代は、地質考古学からして紀元前2800年頃ともされている。
晴れた日だった。銀色のような街並みに金色の陽が降りそそいでいるなかをゆっくりと歩いていた。立ち止まると束の間まぶたを閉じて斜め上空へ向ける。地球が創られてから46億年ともいわれている世界である。世界がまた何かを訣別して新しいはじまりに入っている気配がしてならない。ぼくの意識がはるか悠遠の彼方へと飛びつづけているような気がしてきた。ふたたび歩いてゆく。
◎プロフィール
帯広在住。自営業。文筆家。
著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)
銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)
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