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エッセイSP(スペシャル)

通う・・

たかやまじゅん

2015年2月16日

 地下鉄に乗ると大半の人は下を向いて画面を弄っている。まして東阪名で朝の電車内を見回すと、一様に俯き加減・・俗に言うガラケーを出すのをためらってしまう。
 利き手を痛めたこともあって、年明けにスマートフォンを選ぶ。携帯を通算して20年近く使っていることから割引サービスが適用され、メガネを掛けなくても見易い大きな画面の最新機種を、見つけた。
 取扱い説明書が薄いことを不思議に思い、サービスカウンターに行くと今までの説明書の厚さどころではない分量になるそうな。「ここで何でも聞いて下さい」と若い係員が初歩の使い方を教えてくれた。
 翌日から、質問することをまとめて通い始め、箇条書きで10項目以上あったのが、暫くして8つに減り、やがて5から3になり「日ごとに上達ですね」と顔馴染となっていた。
 街に出て、途中で操作が分らなくなり店に飛び込むこともしばしば、一週間ほど行かないと「大丈夫でしたか!?」と言われ、苦笑する。習うより慣れろ・・通話・メール・検索まで一通り出来ると、指の負担も軽減された。
 脱臼した親指の腫れが引くころ、整形外科の主治医からリハビリを勧められ、朝一番で行く。入口に10人ほど並んだ先頭から「あなたは何番ですよ」と声がした。受付にあるバインダーの教えられた番号に名前を書くと、待合室はいっぱいで世間話に興じる声が響き、順番を仕切った人は常連のようだ。
 家から6分の近さ、最寄駅の側にあるから街へ出た帰りでも寄れ、夕方は待たずに済む。週三回、トレーナーの若くて明るい応対に接すると「さあ、治すぞ!」の気持ちが湧く。
 診察券を出し「空いてますよ」とカードが渡され、部屋に行き「準備が出来たらどうぞ」と声が掛かり温水で10分、電気を10分。ところが、ベットに寝て「電気が入ります」と言われた瞬間、歯医者とヘアサロンの椅子と同じようにお休みモードに陥ってしまうが、それも束の間でマッサージが始まる。
 初めは触られただけで飛び上がったが、三ヵ月も経つと親指を中にして曲がるまでになり「手袋が履けた」ことを告げて、トレーナーから「治そうとする気持ちが伝わると力を貸したくなるんですよ」の言葉に、こころまで癒された。

◎プロフィール

〈このごろ〉「そうだ京都、行こう~JR東海」のCMに惹かれて本も買った。旅の初めはどこにする、か。梅に桜・・山笑う。

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