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エッセイSP(スペシャル)

ひとりだからこそ

吉田 政勝

2015年3月23日

 心理的に「自立」できていない人間は、どうしても一人で過ごすことができない……という。心理学の本に書いてあった。ふむふむ、と納得した。
 自分の心は基本的に自分一人で支えないことには、どんな人に出会っても依存的になってしまい、相手にとっては「うざいやつ」と思われる。
「あなたなしでも生きられる者同士でいたい。あなたなしでも生きてゆけるけど、あなたがいてくれて、とても幸せ」そうありたいと思う。
 実は私は一人でいるときが好きなタイプだ。当たり前のことだが、読書は一人で本を開く。図書館に入り本を選ぶとき、また調べものをしてレファレンス室にとじこもる時間も至福の時間だ。一人で3時間いても足りないくらいだ。
 文章を書くことも一人の行為だ。こんなふうにエッセイを書いているが、文章教室や通信教育で受講した時も独学のようなものだった。パソコンを覚えるために、分厚いマニュアル本を読んだ。何もかも誰かに教えてもらうわけにはゆかない。今や、パソコンを使えなければ仕事に支障が生じる時代になった。
 そもそも勉強とは自分で向き合うものだと思う。誰かとつるんでできるものではない。実に学びとは一人の営みだ。
 ちなみに教育基本法では、国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に学習することができる、その成果を適切に活かすことのできる社会の実現が図らなければならない、となっている。
 つまり学校で勉強が終わるわけではない。長い人生を通して学んだことが評価される社会をめざすのが生涯学習の理念。学歴評価よりも、今は何ができるかで評価されつつある。
 私の四十代は自営として独立したこともあって、仕事がらみで人間関係が広がっていった。営業活動が先ではなく人との絆や信頼関係ができておのずと仕事が自然に派生してきた。会社に縛られないから自由に行動した。選挙に顔を出し、広報や印刷物を制作した。観光協会の理事を担いイベントのポスターを作った。坂田明さんの音楽会も手伝った。高野孟、藤本敏夫さんと渓流塾を発足させた。芽室国際交流の事務局もやった。
 数年前から、すべての団体活動をやめ役職を返上して、十勝の開拓史を調べ始めた。一人でしかできないこともあると思った。この春、自身の微力の限りを尽くして調べ上げた「流転・依田勉三」が本になる。これこそ一人ゆえの成果と自負している。
 

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。エッセイ集「モモの贈りもの」発行。晩成社の研究家。

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