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エッセイSP(スペシャル)

ひととき・・

たかやまじゅん

2015年5月25日

 毎月読む「ひととき」と言う雑誌は、20年以上続くJR東海のCM「そうだ京都、行こう。」の特集号が切っ掛けだった。巻末には東海道・山陽新幹線ルートマップと時刻表があり、そのエリアをテーマに組まれている。
 すでに訪れていた竹田城や赤穂などは、思わず「読みたい!」とバックナンバーを取り寄せてしまった。文・写真・広告がほどよく構成され興味は尽きず、先月号が瀬戸内の水軍、最新号は琵琶湖周辺で旅ごころを誘う。
 BSで放送される紀行教養番組も歴史秘話、街道を往く、鉄道絶景など枚挙にいとまがない。映像を通すと、別の角度からその由来や風土が身近になり、中でも天空や沖からの眺めに知らない日本がある。そして見に行く・・旅に出る理由は簡単なのだ。
 雅楽の青海波(せいがいは)で舞う装束は、波を鱗状にした文様で、遠くカスピ海から中国を経て伝播したと云われ、四季折々に海の名所を詠う清元でも名高く、祝いの席で披露されることも少なくない。
 ストックした音源のうち美しい日本を謳った曲で、平成9年の丘灯至夫作詞・市川昭介作曲「青海波」がある。
 この両氏は福島県の出身。丘先生と言えば、何をおいても舟木一夫さんの代名詞「高校三年生」・・オイオイこれしかないのかヨ!?と叱られそうだが、国が定めた「日本の歌百選」にちゃんと収められている。さらに、舟木さんの名唱で映画主題歌としても知られる「絶唱」は市川先生だった。
 さて、件の青海波だが、丘先生は「大変面白い企画で、コロムビアの若い新内歌手が唄って関西方面で評判がいい」と自伝で語られている。日本列島の素晴らしさを波間に醸し出すスケールの大きなこの曲は、復興途中の福島へ託すエールのように思えるのは、私だけだろうか。
 先月のある朝、館山で知己を得た日舞の里見香華(こうけ)家元と電話で話した際に、青海波のことを告げると「この曲で踊るのが私の十八番・・唄っている方は、何度もこちらに来ています。」と言われた。そして数分後、「里見流のお家元からお話を伺いました」と青海波の声が聞こえてくる!!
 京都の新内弥栄流で35年のキャリアを持つ、新内枝幸太夫(しんないしこうだゆう)師からの連絡にビックリ・・歌で繋がる佳きひと時となった。

◎プロフィール

〈このごろ〉江戸時代の京で活躍した斬新な想像力と技法の絵師、伊藤若冲。代表作「群鶏図」を見ていると、焼き鳥が食べれなくなる。

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