並ぶ・・
2015年7月21日
そこは、房総半島の真ん中あたりの富津市、内房線の浜金谷駅近くに建っている。目の前は海で、対岸の三浦半島をフェリーが結ぶ。東京からはアクアラインを抜ければ、車で1時間半の近さだ。
金谷美術館の開館5周年記念特別展として、房総を物語の舞台とする八犬伝の「アートで見る南総里見八犬伝」が企画された。浮世絵から現代までの関連作品が取り揃えられ、6月11日~9月13日の3か月間開かれる。
八犬伝の浮世絵収集としては第一人者である名古屋同朋大学で日本近世文学の服部仁教授による出品。館山市立博物館からは新八犬伝の人形など。そして私は今に伝わる八犬伝の本やコミックなどを提供することとなった。
服部先生とは名古屋にいた折り知己を得て、館山市立博物館は昨秋に18年ぶりの再訪をしている。そんな繋がりで、昨年の12月に札幌で開催した里見八犬伝展のことが金谷美術館に伝えられた。
6月中旬、なんとオープニングのレセプションの席に連なる栄に浴した。展示のプロデューサーで、かつて箱根彫刻の森美術館の館長をされた鈴木隆敏顧問の案内で館を訪れると、鈴木裕士館長始めスタッフの方々から歓迎を受ける。
背広の胸元に来賓としての胸章をつけると、何だか面映ゆい感じだったが、その夜は海の幸を肴に地酒を酌み交わす懇親会も開かれ、主催者の心遣いに酔う。
鈴木館長に伺うとこの地の庄屋の家柄で16代目。また街の裏手にある鋸山の石切場を差配した棟梁の末裔にもあたるとのこと。別館の展示会場は、明治35年に建てられた石蔵で、国の登録有形文化財に指定され、井戸や石垣にも房総石が施されている。
人口1600人弱の土地で、町興しと子どたちへ芸術や文化を伝えたいと熱く語られた。本館と別館で230点の作品中、75点の児童書やコミックが並んでいる。夏休みに子どもたちの目にとまれば嬉しいものだ。
この日の泊りは、安政元年創業の「かぢや旅館」。何でかぢやなのか・・さっそく5代目という若主人に訊いてみる。鋸山の切出し用の刃物を作った鍛冶屋で、石切職人の宿にも使われたことから旅館になったそうな。この街の歴史が少し分かってきた。
◎プロフィール
〈このごろ〉帯広に行く。第2週の吉田政勝氏と第4週の梅津邦博氏も合流して富田編集長を囲み、本誌の創刊35周年の節目を肴に夜は、更けた。