聴 力
2016年7月25日
3年前の2月に、激しいめまいで気分が悪くなりトイレで吐いた。内科で診てもらった。「脳が関係しているかもしれない」と言われ、脳外科へも行きCT検査をした。脳には異常がないとの診断に安堵した。
図書館で、めまいについての専門書を何冊か読むと、めまいは耳と関係している、と書いてあった。耳鼻科へ行き、聴力検査をすると左耳の聴力がかなり落ちていた。
そういえば「街であいさつしたのに気づかなかったみたい」と同級生に言われたことがある。仕事の場では話しかけたのに無視された、と苦情が舞い込んだこともあった。
さらに心当たりがあった。
知り合いのTさんと釣りに行く朝、私はTさんが運転する車の助手席に乗る。この時は目的地まで、釣りのことや世間話をしている。
釣りを終えて、車に戻ってやや遅い昼食をとる。弁当やおにぎりを頬張ってから帰路に向かうが、今度は私が運転してTさんは助手席に座る。
だが、来る時は話が弾んだのに、帰りはTさんの話す声が小さい。そのうち彼は眠ってしまう時がある。釣りで川歩きをして疲れているし、昼食を摂った後で、リラックスして眠くなるのだ、と私なりに解釈した。
私は左耳の聴力が低下していることを知らず、Tさんは話し声が小さい、眠ってしまう、と思い込んでいた。私と彼は10年前から渓流釣りの友達だ。難聴になったのは3年前ころからだと推察できる。
私はTさんに手紙を書いた。
右耳は正常に聴こえるのですが、左耳が難聴であることが判明しました。それで気づいたことがあります。私の左から声をかけてくる場合は、少し大きい声で話し掛けてくれませんか。Tさんと同行する釣りは楽しいのですが、どうして帰りは会話が弾まないのか、と疑問でしたが、私の左耳の難聴のせいで聞き取れていなかったのです。迷惑かけていたかもしれない、お詫びします。そう手紙に書いた。
すると、Tさんも「最近、テレビの音量が以前より大きいと家内が言うんだ」と苦笑するのだった。実際に、Tさんは会合に出る場合などは小型の補聴器を使っていると話していた。その後、彼と釣りに同行するとき、お互いに配慮して大声で話しあうように心がけている。
◎プロフィール
(よしだまさかつ)
北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。「流転・依田勉三と晩成社の人々」刊行。