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エッセイSP(スペシャル)

心意気・・

たかやま じゅん

2016年9月19日

 この夏、1960年代のポピュラー音楽から文化を紹介する企画展に携わる。かつてレコードがひとつの時代を築いてきて、今も押入れや棚の奥に仕舞われていることも少なくない。私が持っているのは映画音楽ばかりで、ポップス系は数枚であった。
 先ずは展示に向けて男性と女性歌手、グループや映画音楽など6つのパートでリストを作り、数年前から参加しているオールディーズを聴く会の人たちにレコードがあるかどうかを訊ねると次々とアドバイスと示唆があり、借りられそうな曲目を見た時、私の方が躊躇してしまう。ジャケットだけでもコレクターアイテムに相応しい貴重品ばかりで有難い反面、責任を感じ始めた。
 普通、自分が人知れず歳月を掛けて集めた物は、人に触ってほしくないし、まして貸し出すことなどしない。それを我がことのように思い提供して貰えることは、展示する側には何よりも増して嬉しいの一言に尽きる。その心意気に応えるため、展示の準備にふた月を費やし、傷めないよう運搬にも工夫を凝らした。
 そして今年が来日50年を迎えたビートルズの試聴盤LPも借りた。つまり発売前に、メーカーが関係者へ配るレコードのことであり、デザインもなくラベルに曲名も記されていないという逸品で、よく保存されていたとつくづく思う。
 折しも「ビートルズのデザイン地図」と言う本を著した方と知り合った。音威子府や松前で高校の校長を歴任され、現在は大学でデザイン学を教える石塚耕一氏で、足寄の出身だそうな。ビートルズのアルバムを楽曲としてだけでなく、アートワークとして捉えて考察をしていた。この観点で展示する160枚のレコードジャケットのデザインを視ると、当時の世相が浮かんで来る。
 さらに時代背景のツールとして、アンティークや古書を取扱う文教堂書店の今野勝彦社長から、店頭に並んでいるトランジスターラジオやプレーヤーが貸し出されるなど多くの協力が集まり、かでる2・7(道民活動センター)9階学びの広場の展示ルームに、北海道文化財保護協会が提唱する文化を伝える活動を、レコードのジャケットを通してまとめ上げた。

◎プロフィール

〈このごろ〉地形や地質を通して歴史に触れるブラタモリが本になった。自分が行ったところを見るタモリから読むタモリで楽しめる。

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