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エッセイSP(スペシャル)

砂糖工場から

吉田 政勝

2016年12月26日

 1年前の12月だった。新聞を読んでいたら「修理作業中、機械に挟まれ死亡」という見出しに釘付けになった。私が派遣の仕事で働いたS製糖工場だった。
 9年前、そこで働いていたときの光景が脳裏によみがえってきた。その年は自営の仕事が減ってきたので、7月末から派遣の仕事もしていた。私はデザインの制作をするのが本業だが、専門職に固執せず需要のある場に移動すればいい、労働もいやではないと思った。職業に報酬の差があっても貴賎はない。
 10月の初めからその砂糖工場へ通った。梱包作業のラインを前に手順を説明された。主任は「怪我をしないように」と言い、前年に機械に巻き込まれ大怪我をした作業員がいたことを聞いて緊張した。
 最初はラインから流れてくる650gの袋に入った砂糖を検品しながら素早く箱を組み立てて製品を入れる作業だった。やや年輩の女性Gさんが厳しく指導してくれた。「よく見て、覚えてよ」と言われるが、その動作が早すぎて分からなかった。他に検品をしたり、20キロの大袋をパレットに積む仕事もあった。女優の北川景子似のMさんが「箱詰め練習してみる?」とやさしく声をかけてくれた。苦手な仕事を早く克服したいので挑戦した。男性のYさんが側に来て手本を見せ「もう少しスピードアップを!」と怒鳴った。
 半月が過ぎたころに、2階の袋貼りに移動になった。係長に「他の人の袋貼りも参考にして」と言われ、フィリピーナ女子の素早い独特な手の使い方に感心した。家へ袋を持って帰ってからも特訓した。やがて厳しく指導してくれた女性Gさんが「よくなったね」と笑顔でほめてくれた。
 11月の作業終了後に詰所に顔を出すと、所長が「しごかれていたが…あなたは使える人と報告が届いている。今後もめんどうみるから、がんばって」と言われた。うれしかったが、1日何千枚という袋貼りで腱鞘炎。中指はバネ指になって外科医院へ通っていた。
 秋にF制作会社の面接を受け、内定を受けていた。その年末で砂糖工場を辞めると所長に伝えた。
 ふたたび生業としていた物づくりの職場に戻れるよろこびを胸に秘めて、新年を迎えたことを今でも鮮明に思い出す。

◎プロフィール

北海道新聞「朝の食卓」元執筆者。十勝毎日新聞「ポロシリ」前執筆者。「流転・依田勉三と晩成社の人々」刊行。

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