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エッセイSP(スペシャル)

紡ぐ・・

たかやまじゅん

2017年3月20日

 義母の入院先で駐車場を利用している。何回目かで係員に顔を覚えて貰えた。もしかすると、顔より車種やナンバーの方が先かも知れない。最初は挨拶だけだったが、家人が病室に行っている間、言葉を交わすようになった。
 話をする中に、時間帯とか曜日などでの混み具合を知ることが出来た。冬場は雪でスペースが狭められ、私の車は幅があることから出入りのし易い場所に誘導してくれる。駐車して係りに頭を下げる人、笑顔で応ずる人、何も言わない人など様々いて、中には2台分に跨って止めたので、移動を促すと反発し、クレーマー紛いになった人もいたそうな。ひとは「ご苦労様です」「お世話様でした」の一言があれば、お互いに心が和むはずなのだが・・。このような話を聞いて10年前のことを思い出す。
 永年勤めた会社をリタイアした後、縁があって二年間ほどスイミングスクールで働いた。仕事は事務処理から施設管理全般など多岐に及んだ。すべてが初めてのことばかりで、送迎バスの交通安全を交番に、AEDや防災が消防へ、保護者の対応については近くの小学校に教えを請う。毎年恒例の競技大会や、春・夏・冬休み毎の水泳教室は、早朝から始まり騒がしいことから、近隣へのあいさつも欠かせない。こうして地域の方々と繋がりを保てた。
 開催中は、駐車場で保護者の車両整理に当たっていた。子供の講習が終わるまでロビーで見守り、車に乗せて帰る親の熱心さを垣間見た。満車となってしまった駐車場は、次の回と入れ替わるとき、路上で待つ車と出る車を捌くのに神経を使い、必然的に言葉を交わすようになる。慣れてくると「一回りしてくる」などの配慮をして貰え、こちらも「何分後には空きます」と告げることもしばしばあった。
 いつしか「おつかれさまです」「気を付けて」と言葉を交わし、進級すると「ありがとうございました」「よかったですね」と会話も弾む。それが子どもに伝わるのか「おじさん受かったよ」と嬉しそうに走って来るので「おお~頑張ったね」とハイタッチを交わす。これこそ暑さや寒さも忘れるほど私の顔がほころび、何物にも代え難い瞬間として忘れがたい。
 いま駐車する立場になり、人と人を紡ぐのは一寸した言葉なのだと、あの頃の温かな情景が浮かんでくる。

◎プロフィール

〈このごろ〉帯広の友人が電話の中で「地震だ!」と叫ぶ。数秒後、家の中がカタカタ鳴る。テレビを点けると震源地は十勝南部、震度3であった。

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