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エッセイSP(スペシャル)

遠方から・・

たかやまじゅん

2017年7月17日

 駅から歩くこと10分、木々の緑が深い青空の下に大伽藍が見えた。ここはテレビ時代劇「鬼平犯科帳」のエンディングで、紅葉に染まる通天橋が写る東福寺である。駐車場には、タクシーが数台止まっていた。その運転手が修学旅行の中学生たちに、解説しているのを目に留める。ひとクラス50人が、10数台のバスを連ねた私たちの時代とは違うようだ。
 方丈で手を合わせていると年配の方が近づいて来る。思わずおはようございますと頭を下げた。「ここには初めて・・」との問いに二言三言返す。近くに住んでいて毎朝の散歩道だそうな。北海道から来たと告げると境内の説明をし始め「日本最古の便所がある・・」との言葉に、思わずええっと声を上げてしまった。 室町時代に作られて、禅宗の修行僧が一斉に用を足すトイレの遺構で、国の重要文化財になっていた。
 次に近くの門を指さしながら「六波羅門と言って柱に矢の痕が残っている」と内側を開き見せてくれた。六波羅といえば六波羅探題があったので、鎌倉時代に戦いが行われた際の門が移築されたのであろう。
 国宝の山門に至っては「子供のころ、ここに上がって棒切れを振り回していた」と平然と言ってのけた。今だったらたいへんな問題となるに違いない。偶然にも地元の方に案内をして貰えたお陰で、いかに古刹が地域の人と文化を育んで来たかを垣間見た。
 これで思い出すのが、昨年の秋に訪れた石清水八幡宮。駅からケーブルで5分ほど登り山頂の社殿に参拝し、参道に並ぶ石灯籠群を眺めていると、後ろから「何か分かりましたか・・・」と声がした。代々この麓に住むと聞き、石灯籠の一つに「大西坊」と刻まれているのを尋ねてみる。
 昔はここに僧房がたくさんあって、大石内蔵助の弟が住職をしていたのが大西坊で、やがて内蔵助の従兄が僧房を継いだと言う。この頃に「松の廊下での刃傷事件」があり、内蔵助は赤穂城を退去して、山科へ移り住んだあらましはものの本に詳しい。その京都へ橋渡しをしたのが従兄だったとの話で、世上このことはあまり語られておらず、歴史の秘話を識ったような思いがしていた。
 この時も北海道から・・と告げたことで話が弾んだ。このように土地の人が、なぜ私にだけ声をかけてくれるのか不思議に思うときがある。観光客の多い土地柄ゆえの親切さなのか。それとも私が遠方から来ているぞと言うような雰囲気を、漂わせているのだろうか・・。

◎プロフィール

〈このごろ〉買ったばかりのパソコンが不具合で修理、ひと月余りメールや検索をスマホで代用する。日常この二つは手放せなくなった。

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