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エッセイSP(スペシャル)

かつて・・

たかやまじゅん

2017年8月28日

 朝刊で先ず開くのは、スポーツ面でも番組表でもなく株式欄である。東証一部の化学部門に属する会社の△▼に「フムフム~」「アリャリャ・・」と一喜一憂するのだが、トレーダーのようにすぐ売り買いをするわけではない。かつて日本の企業が元気だったころ仕事に就き、40年近く勤めてリタイアし、株主の一員となった。
 上京すると必ず通る銀座7丁目は、勤めた会社の発祥地。ここで入社式が行われ、研修を受けた108人が全国に赴いた。私も転勤を重ね営業という仕事柄、担当した得意先も少なくない。何処にいても小売店の軒先に目が行くのは、永年の習性なのだろうか。
 商店街から屋号の付いた商売が消えて久しい中、見慣れた看板に出会うと心の中で頭を下げていた。デパートに入るとフロアに漂う白粉の匂いが昔日を思い出させ、カウンターにお客さんの姿を見てホッとする。
 久々に訪れた帯広のホテルで、納品業者が運ぶダンボールに見慣れたSの頭文字を目に留めた。京都で泊まったホテルは、フロントに置かれた宿泊用グッズが男性用ブランドUであった。チェックインして最初に探すのが、浴室のシャンプーやコンディショナーであり、件の製品を見つけるとそのホテルに親近感を覚えた。
 所属している団体が秋に行くツアーは、千歳を発ち羽田で乗換え北陸を目指し、往復とも全日空機になっていた。この案内を見た知人が「うちの会社を利用してくれた」と嬉しそうに呟き、話の端々にかつての仕事ぶりが垣間見えてくる。リタイア後は社友会の代表をしているそうな。
 お茶会と称して、時おり映画のよもやま話に興じる友人がいる。劇場係を振り出しにシネコンの立ち上げにも携わり、責任者を務めていた。退職した今でも、興行の情報に詳しい。
 それぞれ業種や職種は違っていても、お互いに昔とった杵柄は、何年経とうとも変わっていない。
 今春、銀座の本社ショーウィンドーがピンク一色に染まっていた。「Pink pop!」のディスプレイに惹かれて、思わずロビーに足を踏み入れてしまう。受付嬢の「会社のお方でしょうか・・?」との問いに、私が入社した時のキャンペーンタイトルが〝ピンクポップ〟だったと答えると、彼女はその瞬間に立ち上がって深々と頭を下げていた。

◎プロフィール

〈このごろ〉暑さと湿気、そして豪雨の後に冷たい風。かけ布団からタオルケットにしたが、また布団を出す。気候に身体がついていかない。

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