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エッセイSP(スペシャル)

うまい棒

吉田 政勝

2017年9月25日

 子どもたちを対象にした「マジック教室」の取材をしていたら、後ろの席に遅れて座った母子がいた。女の子は手品の工作を始めた。傍の母親が「のりをつけすぎ。少しの量をひきのばして」と助言をしている。私はその動作を黙って見ていた。
 次にトランプのマジックで彼女はハサミを使って工作を終えて、3枚のトランプから「真ん中のカードを引いて」と声をかけてきた。私でいいの?と思いつつ引いた。クローバの8がダイヤのキングに変わっていた。「えっ、どうして?」と私は率直に驚いた。彼女はマジックが成功して喜んだ。
 3時の時間に、会場の子どもたちにおやつが配られた。その女の子は「うまい棒」を手にして「チキンカレー味が、苦手なのでもらってくれますか?」と私に渡そうとする。子どものおやつを大人が嬉しいはずないだろう、という態度は微塵も表情に出さずに「いいの?、ありがとうございます!」とていねいにお礼を言ってうれしく受けとった。
 目線を低く、童心にかえって子どもと親しくなることに私は抵抗がない。彼女は小学5年生くらいのかわいい子だった。
 彼女のお母さんは、帰り際にマジックの講師に「うちの子は工作が苦手で~」と話していた。そのことばを聞いて、彼女は算数や国語は成績が良いにちがいない、と私は想像した。他の教科ができても、体育や図工が苦手な子がいる。自分の小学校時代にも、そんな同級生がいた。
 そのお母さんは、わが子を工作が得意ではないと嘆いた。そんなことはない、マジックが成功したではないか、と私は胸でつぶやいた。
 女の子の顔を見ると、嬉々とした明るい表情だった。「うまく出来てよかったね」と女の子に声をかけて教室を出た。
 外は暑い太陽が照りつけていた。買い物をするため、スーパーに入った。冷房が躯に心地よかった。店内を歩いていると「うまい棒」が目の前にあった。商品の表示で味の種類がいろいろあることが分かった。彼女の笑顔が去来し、すがすがしい気持ちになった。
 自宅に帰って、うまい棒をかじった。たしかにカレーの味がした。また、女の子の笑顔が浮かんできた

◎プロフィール

気象観測で2番目の暑い7月だった。1位は大正13年で依田勉三が中風で病いと闘い、日記には暑い日々の記述がある。

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