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エッセイSP(スペシャル)

ギョっ・・

たかやまじゅん

2017年10月23日

 江戸時代、滝沢馬琴が「南総里見八犬伝」を48歳で書き始め、完結を迎えたのは28年後の75歳であり、98巻106冊に及ぶ大長編となっていた。明治以後、出版された古典全集やダイジェスト版、現代語訳と子供向けやコミック版などは枚挙に暇がない。
 以前から発行されると聞いていた八犬伝の全注釈本第一巻が、先ごろ出版された。菊版で200ページ余にある文字や登場人物の細部に亘り解説が施されている。読む者には嬉しい限りで愉しみのひとつなのだが、一冊を読み終えるには相当な日数を要しそうだ。値段も文庫本なら10冊ほど買えるところから、次の発売が何時なのか気になった。
 出版社に訊くと全18巻の予定で、1年に1冊?と分かりギョっ・・完結するときの私は80代半ばになっている。著書は私より5歳上の筈だからその時は90歳であろう。最初に出された江戸時代ですら版元が3回変わっていた。今まで蒐集したのを調べると全訳刊行としながら、続巻が中断したケースも少なくない。読み手があって、書き手がいて版元がある。果たして私は、最終巻を手にする日が来るのだろうか・・!?
 数年前から日本美術が注目を集め特別展も開催され、私も一昨年の琳派、昨年の伊藤若冲、円山応挙や葛飾北斎などを巡った。直近では長沢芦雪や国宝展が催される。この機会を逃してはと足を運び、展示図録が会場しか置いてないので手にしてしまう。
 雑誌の広告で東京の画廊が即売会カタログを無料送付と謳っていた。古書即売会目録のようなものと思いながら取り寄せてみる。数日後、LPレコード大で図録より重いものが宅急便で届く。書画と近代絵画が400点余のカラー写真で300ページに及び、一点毎のサイズや形態、巻末には作家の来歴一覧も載っている。図版の価格を数ページ試算しただけでも数千万を超えギョっとなった。最低で8万5千円、上は1千万円と表記されていた。
 知り合いの美術館学芸員に見せると「写真や内容が素晴らしい。有料なら図録のような値段では手に入らない」と言われた。メンバー登録したので、次のカタログが間もなく送られてくる頃だ。絵画を買うわけではないが、ページをめくるだけで眼福になる。

◎プロフィール

〈このごろ〉スーパーの駐車場入り口に少年が二人いた。車を止め合図する。前を横切り後ろを振り返った彼らは、ちょこんと頭を下げてくれた。

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