伊豆から鎌倉へ
2017年12月25日
9月29日に東伊豆町で「依田勉三」について講演することになったが、勉三翁の出身地の松崎町を素通りすることができなくなった。
2年前の訪問で、世話になった松本晴雄氏に伊豆ゆきをメールすると「ぜひ松崎町にも寄って講演を…」と依頼された。松本氏から旧依田邸を管理する代表の渡辺攻氏に連絡されて、翌日の旧依田邸での講演が決まった。
講演が済んで「流転」の自署にサインをして、玄関の前で主催者たちと記念撮影をした。
大沢温泉ホテルは営業停止していたが「泊まってください」と事前に言われていたので、部屋に案内された。
旧依田邸は江戸時代中期に建てられた母屋と蔵などが県の文化財に指定されている。玄関などを通ると、依田勉三や兄の佐二平が行き来した姿が脳裏に浮かんだ。北海道開拓に向う前夜「送別の宴」を開いたという座敷では格別な感慨にひたった。
朝の温泉に入って、渡辺さんが来るのを待っていると弁当を渡された。渡辺令夫人の手づくりで恐縮した。連日歓待されて、刺身や金目鯛のごちそうが続いていたので「朝はコンビニの弁当でいいかな…」と私がつぶやいたからだった。
松崎町から下田駅までバスで向うつもりが、渡辺さんが送ってくださった。
伊豆急に乗り込み、藤沢駅をめざした。江ノ電に乗り換えると鵠沼(くげぬま)を通過した。小説家の阿部昭が住んでいた。心酔し40歳代に全集を揃えた。他には茅ヶ崎では開高健、城山三郎。逗子では伊集院静など地縁のある作家を思い出していた。
鎌倉高校前で降りて、Sさんと会った。ふた昔前に、十勝で遊んだ釣り友だった。昨年、体調をくずして入院したという。電車内で近況を伝え合い、共に元気な再会を喜んだ。鎌倉で降りて、大きな鞄を手にして歩いていたが、旅つづきを慮ってか私の鞄を持ってくれた。断わるのは簡単だが、その親切に甘えた。
東京で別の友人たちと会食予定で、Sさんと別れる時間が迫り、鎌倉駅で何度もふり返り手を振った。今度、十勝に来る機会があれば、Sさんと釣りをし、ゆっくり語りたいと思った。
◎プロフィール
千葉鴨川から伊豆へ。北海道に帰ってから釧路へ。旅の目的は観光、食べ物…。そして、人に会うのが何よりの楽しみ。