同期の・・
2018年3月19日
修学旅行や宴会で歌うのは歌謡曲や民謡が主で、軍歌になることも少なくなかった。締め括りは決まって同級生や同僚たちと肩を組み「同期の桜」で、アカペラに手拍子が加わると一つになって連帯感が芽生えた。
故郷で寿司屋を営むYとは小中高を通じて一緒であり、帰郷すると顔を出すのが常となった。新鮮な魚介類の豊富な町で、名物としてグルメガイドには「小田原どん」が載っている。家業を継いだ彼は、商店街の活性化などにも取り組んだそうな。お互いに苗字ではなく、名前を呼びあえる数少ない60年来の旧友だ。
転勤や移動した先で入社が一緒の顔を見つけたとき、真っ先に「よう~しばらく」と駆け寄り握手を交わし、会議や講習会で遭っても同様で、気安くクン付けで口の利ける間柄であった。先輩後輩とは違う共通した気持ちを持つのが、同期生なのではなかろうか。
彼らの賀状に「一度会おう」と書かれてくると、すでに遠行した人の名を耳にすることもあって、再会するなら元気なうちにとの思いが湧いてきた。二度目の事業所で一緒だったSクンは、佐賀に居を構えている。数年前の社友会で顔を合わせ「九州で呑もう!」との約束を思い出す。
佐賀は、文禄・慶長の役で豊臣秀吉が築いた名護屋城、環濠集落で知られる吉野ヶ里遺跡、札幌の街を造り北海道開拓の父と謳われた島義勇の出身地でもあり、訪ねるのを楽しみにしていた。
連絡すると彼が「案内は任せろ・・」と直ぐに話がまとまり、先ずは飛行機のチケット手配。最近はLCCを利用することが多く、千歳空港から福岡空港への直行便は3社、佐賀市内にはバスで1時間15分の近さだ。手頃な発着時間と料金を選び、宿泊先はターミナル周辺で、大浴場があるところを探す。交通手段とホテルが決まり、巡る所をピックアップしながら行程表を作り始めると、私の気持ちはすっかり旅の空。
ネットで同期の文字を検索すると、最初の画面に情報通信用語の説明が出てきた。次にあるのが、事業での数値を前年と比較する言葉で、半世紀も経つと使われ方や意味合いが違う。
私にとってのふた文字は、同じ卒業、同じ入社の人たちのことを指し、幾つになっても貴様と俺とは・・なのである。
◎プロフィール
〈このごろ〉雲の絶え間からお日様が顔を覗かせた。周囲が明るくなり、鳥のさえずりがしてくる。青空っていいものだ。雪よ、また会おう。