時代おくれ
2019年3月25日
この1年ほど、わが郷土の開拓先駆者、鈴木銃太郎について書いていた。小説というよりノンフィクションに近いかもしれない。
原稿用紙換算で370枚に達していた。史料を読み込んで、文章を練って、削って加えた。完成も近いはずとゴールを意識するものの、時間をおいて客観的に文を読んでみると、手直しが次々と出てきた。さらに推敲をくり返し、プリントしたA4の紙の厚さがゆうに40センチは超えていた。
3月初旬に印刷会社へデーターを持ち込んだ。その直後に担当の方から問い合わせがあった。
「ヨシダさん、データが開けないのです。編集ソフトは何?バージョンは?」と聞かれた。少し不安になるが、正直に応えた。私の作ったデータのアウトプットにトラブルが出ているのが理解できた。
3日後に、校正が出来ましたと、連絡があった。ついに校正の段階にたどりついた、と私は気持ちが高ぶった。いつも校正は楽しみだが、データが意図通りなのか、と心配にもなった。その校正を見ると、本文の行の配列がズレている。私が作成したパソコンの画面と違っていた。
「なぜ?」と印刷会社の窓口の部長に質問した。話をまとめると、こうだった。私の編集ソフト(アプリケーション)は今は主流ではなく、バージョンも古いのでうまく出力できていない、という説明だった。
考えてみたら27年前に独立した私は自営には編集やデザインのデジタル化が必要だと考えてアップル製品のパソコンを購入した。当時、帯広の印刷所はまだパソコンを導入していなかった。デザイナーたちも数人がパソコンを始めたにすぎなかった。
先端を走っているつもりが、気づいてみたら、私は次々更新する技術革新の波に乗り遅れて、慣れた古いシステムのまま仕事をしていた。
――まるで浦島太郎だ。と苦笑した。
私はもう少し編集(出版)の仕事を続けたい気持ちがあるので、古いパソコンと別れて、最新のデジタル環境に変えなければならないと考えている。
とにかく苦労とデータのトラブルを乗り越えて、本が発行されるのが何よりうれしい。
◎プロフィール
(よしだまさかつ)
ザ・本屋さんの「十勝文庫」の企画で私は「菜根譚」(さいこんたん)を勧めています。自分磨きのためにも、ぜひ買ってください。