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エッセイSP(スペシャル)

札幌へ

吉田 政勝

2019年7月22日

 久しぶりの札幌ゆきに心が弾む。都市間バス「ポテトライナー号」に乗る。旅の交通移動中のぼんやり時間が気に入っている。
 昼頃に札幌時計台前で降り、地下鉄大通り駅から「宮の沢ゆき」に乗った。西18丁目駅で降りて、近くの「道立近代美術館」に入った。荷物をロッカーに入れて、「東山魁夷展」を観た。 
 巨匠の生涯をかけた日本画の大作群に圧倒された。唐招堤寺の障壁画の大海原から波の音が聴こえてきた。
 鑑賞後、ロビーを出て周りを見渡した。お土産を見つめる二人の女性がいる。近づいて横顔を見て「Mさん?」と声をかけると振り向いてくれた。二人はすでに展覧会を観終わったところだった。
 2階のレストランで食事をすることになった。私は彼女らの向いの左の席に座った。私の左耳は難聴なので会話を聞きとるために席は左になる。
 彼女たちと出会ったのは、私が故郷の十勝を出て、札幌のデザイン学校(夜学)に学んだ18歳のときだった。教室のやや前の席に座った私と、その周りの生徒たち5〜6人の仲良しグループが形成されていた。その中に彼女らがいた。授業が終わって、外に出ると21時を過ぎていた。街灯の帰路をよしない会話を交わしながら歩いた。テレビ塔の近くにある地下のレストランで腹ごしらえしたこともある。それらの場面がよみがえってきた。
 Mさんは北海道では誰もが知ってる大企業に勤めていた。主任の彼女はイベントの責任者で、その顔写真が新聞に載っていた。
 同郷のEさんは帯広で銀行に勤めていたが、退職して札幌に出てきた。勤めながら編集やルポライターの仕事をしてきた。夫は北海道では著名な写真家である。私も撮影や取材ライターなどを経験しているので、締切りに追われる業界の苦労が分り話が通じる。
 青春時代をふりかえりながら、お互いの思い出を語った。私にとっては楽しい至福の時間である。
 帯広の銘菓を二人に渡しながら、「元気でいてね」と声をかけた。外に出ると雨が降っていたが、なつかしい二人に会い語りあって、私の心は晴々としていた。

◎プロフィール

私の旅はあわただしい。メインの用件の間に面会すべき人を増やすからだ。みな再会を歓んでくれる。それが心底うれしい。

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