少女の演説
2019年10月 7日
16歳にして環境活動家。一躍有名になったスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん。先般、国連気候行動サミットでの怒りの演説に関して、日本でも賛否両論の声が上がった。彼女の演説は大人たちへの忠告だった。利益のために地球を破壊しようとしている。気候変動を食い止めるための対策をせず、子供たちの未来を恐怖に陥れている、というもの。
九月二十三日の演説前から、少しずつグレタさんの活動がメディアで流されていた。行動力のある少女だなという印象だったが、彼女の国連での激昂演説を見ていて、ふと「発達障害」の言葉が浮かんだ。
数日後、彼女がアスペルガーと脅迫性障害を抱え、自ら公表していることを知った。
一つのことに執着する。周囲の空気を読めない。私の勤める障害者福祉の場でも何人かアスペルガー障害者を受け入れたことがある。こだわりが強く頑固で、人の言うことをなかなか聞き入れない。時間をかけて伝えても、納得をしていないので元に戻るということが多々あった。障害として受け入れ、本人の考えや気持ちに寄り添う支援に力を入れたが、周囲の人々との軋轢はどうしても収めるに至らず、結局退所してしまう。知性があればあるほどディベート力もあり聞くだけで疲労困憊する。
誰もが好きな仕事だけを楽しんでしているわけではない。嫌だなあ、しんどいなあと思いつつも「仕事だから、乗り越えなければ」と任務をこなしている。
「なぜ僕がこの仕事をしなければならないのか?」
例えば心に引っかかるごとに正直な気持ちを口にすれば仕事は停滞してしまう。普通なら納得できない事も、仲間と飲んで上司や会社への不満をぶちまけることでストレスを発散し、翌日また出勤するのだ。多くの人は不満があっても自分を騙して仕事を継続する。家族のために。脱落者にならないために。自分自身に忠実なアスペルガーは自分を騙すことはできない。「社会」という集団は彼らにとって生きずらい場所なのだと思う。
グレタさんの演説の表現方法は、受け取る側が心を閉ざす北風だったのかもしれない。絶望的な地球環境への恐怖に震え、耐えがたき憤怒で泣き叫んだのだと思う。周りの空気を読む必要性が彼女にあろうはずがない。
誰もが地球環境の変化に不安を抱えているはずだ。世界各地で頻発する異常気象がこうも毎年繰り返されると、ヤバいと思わない人がいるだろうか?数十年後地球がどうなるか?でも先の不安より目の前の利益の方が重要なのだ。私も将来の地球環境を危惧しているが、天秤にかけると今の生活の維持の方が優先されてしまう。
青く美しい惑星、地球。誰が守れる?
◎プロフィール
さえき あさみ
消費税10%。本当に納得できる使い方をしてもらえればいいけれど。