バス旅、八十代
2019年12月 2日
久しぶりに二日続きの休みが取れたので、日帰りのバス旅行に参加した。支笏湖畔のホテルのビュッフェランチと温泉入浴が一番の目玉。日頃たまりにたまった疲労を癒すにはこれしかない。一週間前からカウントダウンをしつつその日を待ちわびた。
朝から快晴。この上ない旅日和に恵まれ、バスが出発した。参加人数が二十数名だったので、大型観光バスの座席も一人2席を確保でき、リラックス度は最高。旅の目的地がどこであれ、これだけでも満足度は高くなる。
札幌近郊の目的地を経由し、適度な空腹感を感じた頃にランチ会場へ。六人テーブルには一人参加者が集められた。同じバスに同乗していただけの見知らぬ六人が向かいあって食事をする。他人同士。一日旅を共にするだけの微妙な関係。こういう場面では誰か会話の糸口を見つけてくれる人がいれば場がなごむ。その役は私の隣の女性が担ってくれた。一人暮らしで簡単な食事で終わらせているから、種類を多くちょっとずつ食べられていいわという感想までは誰のリアクションも薄いものだった。
「私は八十も半ばのおばあちゃんだから」
そのワンフレーズで「えー!」という驚嘆の五重奏で瞬時に一体感達成。お世辞ではなく実に若い八十代をまじまじと見る。同席の面々は熟年世代。老後に不安を抱き始める世代はこういう女性に興味を持つのだ。白髪交じりで顔にも皺が見えるが、背筋がピンと伸びて中肉でお洒落も上品。食欲もあり、私以上の量を軽快に食べ進める。スイーツ各種、搾りたての生ジュース、締めのコーヒーはソーサーの上に小さなデニッシュを載せて。
週四日麻雀に行くという話に「麻雀は老化防止にいいと言いますね」と皆が頷く。高齢者向けのジムで運動してるの、との話に「運動が大事なんですねー」水曜日しか予定が空いてなくてね、の話に「私よりお忙しいですね」魚よりお肉がいいわね、には皆の声は一層強く「やっぱり肉ですか!」
最後の目的地はビール工場の見学だった。ビールの試飲タイムもグイッと、いい飲みっぷり。ビールを片手に野球のテレビ観戦が楽しいとのこと。
人生百年時代らしい。希望どころか、なにかしら脅迫めいたものが感じられて仕方がない。自分の人生が百年保証されているわけではないし、運命なんて神のみぞ知る。どうか私はほどほどでコロリと幕を下ろせますようにと願っているが、こういう女性に会うと老いの受け止め方も変わる。とどのつまり人生楽しめた者勝ちなのだろう。
基盤は健康であることには間違いない。健康か。日々のストレスへの対処が取りあえずの課題になるのかな。
◎プロフィール
さえき あさみ
最近、還暦前の私より元気な高齢者に出会う。戦争を生き抜いてきた世代のエネルギーに脱帽。