チャップリンの映画
2020年1月27日
以前ラジオで脚本家の大野裕之さんが映画「独裁者」について語っていた。「チャップリンのラストの演説が素晴らしい」と力説した。
高校時代に私はテレビでこの名画を観てラストのセリフに感動した。ヒトラー似の独裁者とそっくりな理髪師のチャップリンが入れ替わって大勢の兵士の前で戦争反対を説く。
「人は自由に幸福に生きてゆけるはずだ。どん欲が人の魂を毒し世界を憎しみで包囲した」と語りかける。チャップリンはナチスに対峙する自由と民主主義の先導者として演説している。
チャップリンの映画にはヒューマニズムという背骨がある。『歴史はくり返す』との説を意識しながら映画「独裁者」と戦争について記しておきたい。
今でこそヒトラーはユダヤ人大虐殺を組織的に行った元首として悪名高いが、1930年代ヒトラーは選挙で選ばれた首相だった。第一次世界大戦で連合国に負けたドイツは賠償金を払っていた。失業者が増え経済はどん底だった。ナチスを政財界が支援し、国民もナチスに熱狂した。イギリスやアメリカもヒトラーが共産主義の防波堤になると期待した。
一方、チャップリンは「街の灯」「モダンタイムズ」とヒット作を連発。次作はヒットラーを茶化す「独裁者」の映画を作ると報じられた。すると各方面から反発が起きた。英国の役人が来て「台本を見せろ。イギリスでは上映させない」と脅した。主婦からの脅迫めいた手紙も届いた。チャップリン映画の広告に3人の文化人が推せん文を寄せて圧力が増した。3人の批評家が
ユダヤ人だった。すると「チャップリンもユダヤ人だ」という決めつけでナチスの攻撃が始まった。ドイツではユダヤ人追放法が成立していた。
1939年にドイツはポーランドに侵攻し、オランダ、フランスをも占領した。激しくなる戦争に抗うかのごとくチャップリンは「独裁者」の撮影に踏み切った。イギリスはナチスと戦うと決めた。イギリスの人々は「独裁者の映画を早く作るように」と今度はチャップリンを応援した。1年後に映画が完成し、世界中で上映され大ヒットした。
◎プロフィール
(よしだまさかつ)
絶対も永遠も約束されずに生きている。自分の時間が貴重だ。稼ぐための『時間』を縮小してゆきたい。