見えない敵
2020年3月 2日
新型コロナウイルス(covid-19)の感染拡大。札幌雪まつり後、市内で罹患者が出るであろうことは予想していた。中国政府が団体旅行の中止を通達して以降、確かに中国人観光客の姿がぐんと減った。それでも中国系と思わしきグループが様々なマスク着用でうろうろしている。中国からの個人旅行か台湾か、それとも香港か。
対岸の火事が身近な危険となるまでにそう時間はかからなかった。北海道で初の感染者が出た際の行政の対応について非難するつもりはないが、危機管理体制の不備が露呈した感は否めない。今の時代「隠し事」は許してもらえない。恐怖と不安は怒りの起爆剤となり、悪魔的フェイク情報は一瞬にして世界に拡散される時代だという認識を持つべきだろう。
地下鉄車内でも咳やくしゃみに対して乗客の反応が厳しい。咳が原因で電車が停止するという異常な事態。店舗からマスクが消えて久しく、手持ちのマスクがきれてももう買えないのだ。私も五十枚入りボックスのマスクを常備しているが、購入したのは数年前。それも残り半分となり、その後の入手は困難だろう。
公共の場では、これまでのように豪快にくしゃみをして「ああスッキリ」は許されない。ハンカチでもマフラーでも何でもいいから口を覆い飛沫をまき散らさない「咳エチケット」は常識となっている。
私は風邪でもないのに、室内外の気温の変化や、埃が原因で咳が出ることがある。通勤の地下鉄の中で、停車ごとに着膨れた人がぞろぞろ増えてくると咳が出ることがある。なんと繊細な女なのだろう。たった十分足らずの乗車時間ではあるが、今や咳が出たらどうしようと気が気ではない緊張の時間と化している。
観光客が激減し一般市民の姿も減る街中であっても、人が集まる所には集まるものだ。その一つが柳月。今年職場の創立五周年を祝う紅白餅を受け取りに行った時、人気のお菓子を求めて十数人が並んでいた。数日前の注文の際、店の担当者から、開店直後は長蛇の列ができるのでご注意をという話を聞いた。昼食時に職場の皆に配布したいので、十一時に取りに行ったのだが、まだ行列が。テレビで宣伝している人気の商品は昼までに完売するらしい。紅白餅の受け取りが目的だったが、商品購入の整理券を渡されたので、これ幸いと噂のお菓子も手に入れることができた。紅白餅よりも感激されたことは言うまでもない。
記念すべき五周年の祝賀ランチは、バスク風のチーズケーキの話に終始してしまった。新コロ騒ぎの渦中に於いて、ささやかでも楽しいことはある。どうかウイルス問題が早く収束するよう、感染者は回復するよう心から願っている。
◎プロフィール
いつも賑わっている飲食店が閑散としているのを見るのが辛い。耐えてほしい。