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エッセイSP(スペシャル)

オフタイム

吉田 政勝

2020年3月23日

 2月半ばあたりからテレビや新聞で新型肺炎(コロナウイルス)の感染者の報道が増大した。私は2月26日に講演会の取材(某新聞社の地域通信員として)を予定していたが中止になった。
 翌日は、税の申告のために税務署へ行った。マスクをして列に並び順番を待つが、混雑ぶりと人の熱気でのどが乾き気味になる。ついゴホンと咳払いをしたくなるが、この時勢だから感染者と誤解されかねないので我慢した。その日、十勝で一人目の感染者が出た。用心がにわかに高まった。
 その後、コロナウイルス流行防止のために全国的に小中高休校、大人数の会合やイベントの自粛が一斉に求められるようになった。私が主な取材対象とする催物などが次々と中止になり、記事を書く必要がなくなりオフタイムが増えた。
 マスクをかけて買物に出かけた。引きこもりを有意義に過ごすためにレンタル店に寄り、韓国映画のDVDを借りた。「母なる証明」「シークレット・サンシャイン」「オアシス」などを観た。図書館で本を借りた。伊集院静「ひとりで生きてゆく」、林真理子「綴る女」を一気に読めた。宮尾登美子「生きてゆく力」では結核について記されていた。「新薬ができるまで結核は亡国病とまでいわれるほど患者が多く、とくに若い人たちが狙い打ちにされて命を落としたものだった。一族に患者がいれば縁談など壊れてしまう例もざらだった」戦前、戦後の話である。
 日頃からスマホに画像や音声をメモのように私は記録しているが、このところ新型コロナの情報が増大している。
 新型コロナは中国の武漢市から拡大し、その中国は8万人、次いでイタリアが9千人の感染者に達した。(3月11日で)イタリアは収入のほとんどを観光に頼っている。中国人をはじめ各国から観光客が訪れている。その観光都市で、店舗が閉店し街から人の姿が消えている。その現地の様子をテレビが伝えていた。
 10年前のリーマンショック以降、停滞した経済に中国が車輪の役割を果たしてきた気がする。その中国が休止状態、いや経済の世界化にブレーキがかかった。ことばにならない思いが胸に去来するが、今は迷い込んだ道を「何を大事にすべきか」と考えて歩むしか術がないと思う。

◎プロフィール

(よしだまさかつ)
商業デザイン、コピーライター、派遣業務、取材記者などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞。

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