ソロの時間
2020年4月27日
都市部の新型コロナウイルス感染急増に伴って、4月7日に外出自粛の「緊急事態宣言」が発令された。北海道では2月末から小中高校が臨時休校になり、イベントが次々と中止になった。それに伴い私の副業が激減した。ウイルス拡大の脅威に対して、命と健康が第一という意識変換になってきた。
自宅で過ごす時間が増え、気になっていた家の片付けに着手した。不用な物を捨てる機会だと思った。一時は油絵を描いていたが、空き部屋に置いたままの作品などを外に運んだ。額を解体し、キャンバスを木枠から剥がした。古い家具なども処分する日が近い。
テレビが報じるコロナ状勢に注目しているが、文化媒体としてのテレビは物足りない。自宅での自粛はソロを奏でる文化的な時間でありたい。本を読み、映画を観る時間が増えた。
そんなオフタイムに韓国映画に傾倒した。92回アカデミー賞の4部門受賞した「パラサイト」のポン・ジュノ監督。彼が手がけた「母なる証明」「海にかかる霧」も秀逸だ。イ・チャンドン監督の「シークレット・サンシャイン」「オアシス」も問題作だった。
ある監督の一作に惹かれると、他の作品も観るのが私の癖かもしれない。「受取人不明」「うつせみ」「メビウス」と映像が際立つキム・ギドク監督の作品。カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアと世界三大国際映画祭で監督賞や最優秀作品賞を受賞している鬼才。以前に観た「嘆きのピエタ」も同監督の代表作と知った。「サマリア」「弓」「悪い男」「悲夢」「アリラン」と観た。
「アリラン」はギドク監督自らを撮った自問自答のドキュメンタリーだ。
ギドク氏は異質な遍歴の人だ。中学卒業後、廃車場で車を解体し、工場で電子製品を作っていた。「あの頃は寂しくてみじめだった」と振り返る。海兵隊に5年間入隊した。除隊後、パリで絵を描き、帰国後は脚本コンテストに入賞し、「ワニ」で監督デビューした。「映画監督は尊敬される幸せな仕事だ」と述べる。
ギドク監督の新作は「人間の時間」。藤井美菜、オダギリジョーが出演する。映画は作りものだが、込められた真実に豊かな経験が得られている。
◎プロフィール
(よしだまさかつ)
商業デザイン、コピーライター、派遣業務などを遍歴。趣味は読書と映画鑑賞。