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エッセイSP(スペシャル)

スタコラ・・

たかやまじゅん

2020年7月27日

 いつも札幌駅で見掛けるのは、大きな荷物を抱えコインロッカーを探す観光客の姿だった。これが、北海道で〝緊急事態宣言〟が発表された後、デパートや地下街も臨時休業となり、駅構内の人影は疎らで、コインロッカーには赤いカギばかり目立ち、あの喧噪がウソのように思えた。
 自粛生活で、毎日の歩数も500歩足らず、自然とおやつに手が伸びた結果、胴回りがキツクなり、これはマズイと近隣を歩くことに・・。密集度が懸念される商業施設は避け、野外のコースを幾つか選んでみる。先ずは、旧国鉄千歳線跡のサイクリング遊歩道があった。道の両側には高層住宅が建ち並び、線路だった面影はない。桜の木がまるでトンネルのようになっていて、1時間ほどの花見を洒落こんだ。
 次に、この遊歩道を途中から折れ国道を渡ると、ライブ会場にもなる体育館だが、〝休館中〟で森閑としていた。隣りの広大な公園には、庭園と花壇や藤棚があり、野鳥が群れる間道は森林浴になる。周辺は、昔ながらの面影を残す古い家と低層住宅に町工場があり、普段は車で通り過ぎていた町並みが、歩いてみることで人々の営みが垣間見えてきた。
 もう一つの方向にある会議施設も〝閉鎖中〟の表示が下がり、併設した公園のパークゴルフコースも〝立ち入り禁止〟のロープが張られている。高低差から、建ち並ぶ倉庫群に出入りする大型車両を眺めるのも面白い。樹木があって芝生が広く、子供たちの歓声が響く空間は、気持ちも大らかになり、〝自粛〟の文字を忘れてしまう。
 こうしてスタスタ歩けることを確信し、大通公園や札幌駅へ足を延す。家から十数分で豊平川に突き当たり、土手伝いに河川敷へ下りると陽射しと川のせせらぎに包まれ、青空には白い雲、水面で水鳥が遊ぶ。この清々しい一体感が安らぎを誘いしばし佇んでいた。その昔は暴れ川だったと物の本にあり、遥か大昔は海の底で、カイギュウが泳いでいたそうな。そんな太古のロマンへ思いを馳せさせてくれる。
 周りの景色が見慣れると、街までの40分も苦にならない。快晴のある日、足取りも軽くスタコラ気分で往くと水穂大橋は目の前だ。その時、後頭部にバサっと衝撃を受ける。何事か・・⁉と頭に手を遣り振り向くと、街路樹の枝間から二羽のカラスがこちらを見つめているのだった。

◎プロフィール

〈このごろ〉FMラジオの番組で、今年のテーマ「歴史歌謡講座」は後半に入り、毎回聴いて頂いた方からの感想が、大きな励みとなっている。

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