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エッセイSP(スペシャル)

ドラッグストアのS女史

梅津 邦博

2020年11月 9日

 畑や花壇などで作業をしたら手を洗う。トイレで用を足したり掃除したりすると手を洗う。身体は清潔で健康でさっぱりとしていかなくてはならない。清潔といっても精神的な面もある。現代社会において衛生清潔問題については、さまざまな事柄にあれこれと気になってしまうこともあるだろう。それだけ精神的にも物的にもいろんな作用によって不浄な事が起こったり、かつ黴菌なども常在菌として身近なところに存在している。従って薬品類、洗剤類などは必要不可欠なものではないか。
 昔は、そういう問題にはどうしていたのか、調べたことがないからわからないが、案外道徳的に対処していたのかどうか。とにかく人間は皮膚感覚で生きているだけに避けては通れない問題だが、ましてや自らの健康問題ともなればあだやおろそかになどできるものではない。
 薬局へ行って症状に合う薬をスタッフに尋ねても、ただ単に客の話を聞いて薬品を提示されるのと客の表情・状態を通して体感感覚をおもんぱかって提示するのとでは、違うのではないかという気がするのだが。ぼくは、本当をいえば薬が嫌いでなるべく服まないようにしているけれど。
 風邪気があって行き付けのドラッグストアへ行く。数人の薬剤担当スタッフがいるけれど、その一人にS女史がいる。ぼくが調子が良くない時など、どんな薬品が良いのかについて気持ちにスッと入るかのようなアドバイスをしてくれる。 症状を細かく伝えている時、彼女は聴きながら右斜め前空間のスクリーンとでもいうようなものを真っ直ぐに見詰めているような感じがする。その姿はなんだかハリウッド映画「スターウォーズ」で、女性隊員が操縦室にて大画面の宇宙空間に眼を凝らしながら、不審船がいないかどうか見詰めているというふうにも見えてしまうのだ。女史がそうしている間ぼくの頭の中では、スターウォーズのテーマ曲が静かに聴こえてくるではないか。そうして暫しの間考えているその表情が魅力的でとてもいい。
 その空間にはさまざまな薬品が現れているみたいで、選択排除しながら絞り込みをした後にこの辺りの薬品なら良いだろうと、そうして陳列薬品の前に立って、2~3点選んで示してくれる。まさしくきちんと聴いて考えてくれているその存在感があるのではないか。そこまできたら、その中で最後に1点を選び出すのは自分である。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。岡書イーストモール店で発売中。

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