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エッセイSP(スペシャル)

おぐし・・

たかやまじゅん

2021年8月23日

 この夏は、曇るとジメジメした湿気が身体中に纏わりつき、青空の爽快感どころではない強い暑さに見舞われ、気温は連日30度を超えた。
 歳を重ね髪に白いものが目立つが、幸いにも地毛を保ちフワッとした髪形をしてきたところ、汗っかきの私は外を歩く度に、暑さでハンドタオルが瞬く間にビッショリ、頭は濡れっぱなしで髪のうっとうしさに、いら立ちを感じ始めていた。
 こうしてカットサロンの椅子に座るなり、〝短くするぞ!〟と宣言。やがて頭部で4センチ、側面が1センチほどになり、今までにない髪形の自分が目の前の鏡にいた。店長から「若返りましたね」と言われると、そうかなぁ・・と思わず髪に手をやり苦笑する。
 その昔、男はちょんまげ姿で、女は日本髪を結いそれぞれ長い髪だった。中でも日本女性の髪は、御髪と書かれおぐし(又はみぐし)と呼ばれるほど大切にされてきた。京都嵯峨野の小倉山に建つ「御髪(みかみ)神社」は、髪結いの起源ともされ日本唯一の髪の神社として、全国の理美容業者から崇拝されているそうな。
 今でこそ髪を洗うのは日常当たり前だが、その頃の洗髪はどうしていたのだろうと思い件のサロンで訊いてみる。平安時代には、米のとぎ汁で濡らし、匂い消しにお香りを付けたとか。江戸時代になってからは、海藻のふのりを熱い湯で溶かしながら、うどん粉を混ぜて髪を揉み、洗うのは10日ほどに1回、それも半日近く費やす。やはり昔の女性もおしゃれだったのだ。
 かつて勤めた会社で、シャンプーやリンスなどのヘアケア製品を扱っていた。そのせいなのか、今でも女性の髪に自然と目が行ってしまい、「髪はカラスの濡れ羽色」とか「みどりの黒髪」と言われるような、黒くて艶やかな美しい髪を視ると、思わず見惚れてしまう。
 日本髪の根もとを結ぶ紐は、元結(もっとい又はもとゆい)と呼ばれ、落語の人情噺や歌舞伎でも上演される「文七元結(もっとい)」が浮かぶ。
 明治時代の初め、近代化の象徴として〝ちょんまげ〟がなくなった。今まで結ってきた髪を短くしたとき、男たちはどう思ったのだろうか。その頃の都々逸の節に、「ざんぎり頭を叩いてみれば 文明開化の音がする」とある。
 私も頭が軽くなり、店を一歩出るとこの日は32度、熱気が髪を抜けて行くのだった。

◎プロフィール

〈このごろ〉年に一度の半日ドック受ける。ところどころの経年劣化は免れない。胃カメラは、「経過観察して一年後」と告げられた。

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