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エッセイSP(スペシャル)

不遇な勉強

梅津 邦博

2022年2月14日

 テレビニュースで戦場やアフリカとかどこかの子供たちが、バラック小屋あるいはがれきの中で勉強している映像を何度か観たことがある。政治や生活の環境としては大変ではないのかと思う。それでも子供たちは皆明るい表情をしていることに、ぼくは項垂れてしまうほかないのだった。もしかしてテレビカメラが入るから明るいのかとも思ってもみるが、そうでもないだろう。

 我が母上は昭和10年代の終わり頃。札幌苗穂の鉄道学校が北海道と樺太を合わせての生徒募集があって電信科を受験し、たった1クラス50人ほどだかが合格して採用された。寮生活が始まり、母曰く卒業する時は一番で卒業することを目標としていたというから尋常なことではないだろう。そして食べるものもロクになかった時代でもある。ところが途中で病気をして実家に帰されてしまったのだ。療養が2カ月近くかかって普通なら退学だが、真面目で勉強も一生懸命にやっていたということで退学にならなかった。復学して勉強しつつも夜9時には消灯となり、舎監に見つからないようにこっそりと本を持ってトイレに入り、裸電球の明かりの下で懸命に勉強しつづけたというから大変だっただろう。そうして最後、卒業試験の結果は8番目の成績で卒業証書を拝受したのだった。
 両親は優秀だったのにどうして自分はそうではなかったのかと思う。しかしぼくは聴力が弱くて口下手でそんなに器用な方ではなかったから仕方がなかったとしか言いようがない。とにかく勉強するということにおいて才能があって優秀であるならいいけれど、人間性に問題があるとすればそれはなかなか大変ではないか。気楽に楽しくなんて出来ないのだ。
 時代は変貌しつづけ、近年カフェやコーヒーショップとかテーブルが多くある公共施設の一室などが高校生諸君たちで溢れていることが多い。彼らは勉強しにやって来ているのだ。参考書やノートなどを広げており、時々友人たちとおしゃべりをしたりスマホを見せ合ったりして楽しそうだ。そこに生きてゆくとか生活してゆくとかのような大変さなどみじんも感じられない。そういう彼らがやがて大学生になり、社会人になっても、軟らかく楽しくゆるゆるとした生き方をしてゆくのだろうか。
 たいした勉強もせずしょうもない青春時代を過ごしていたぼくには偉そうなことなんかいえないけれど。しかしあのがれきの中で勉強している子供たちや鉄道学校で苦学していたうちの母などが、カフェでコーヒーやケーキを口にしながら楽しく談笑して勉強している光景を目の当たりにしたらどう思うのだろうか。ま、時代なのだろうけど。

◎プロフィール

帯広市出身。自営業。文筆家。趣味/映画・街歩き・旅・自然光景鑑賞。著書 銀鈴叢書『札内川の魚人』(銀の鈴社)。銀鈴叢書『歩いてゆく』(銀の鈴社)。

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